「エスナ」に関する考察

情報工学科4年 成田清志

はじめに

主にRPGを中心に、世の中のゲームには魔法が登場するものが多くある。
魔法には様々なものがあり、それぞれの魔法ごとに異なった性質を持つ。
ここでは、そのなかでも「ファイナルファンタジー」シリーズ(以下、FFシリーズ)の「エスナ」に関して考えてみようと思う。

ちなみに、私はFFシリーズは7作目までしかやっていないので、それ以降の作品に関しては考慮しないこととする。

魔法

魔法を発動させる原理は、正直に言ってよくわからない。
しかし、魔法を使うことによって(ゲームの中の世界のことではあるが)物理世界に何らかの影響をあたえている。
物理世界に影響を与える以上は、魔法の性質も基本的には物理法則に則っているはずである。
ここでは、このことを前提として考察をする。

エスナとは

FFにおけるエスナとは、状態回復の魔法である。
具体的には、毒・猛毒・眠り・麻痺・沈黙・忘れる・暗闇・盲目・混乱・呪い・老化・小人・カエル・ブタ・カッパ・石化を正常な状態に回復する。
逆に、死亡・戦闘不能・ゾンビ・一部の魔法効果の状態は回復できない。
さらに、HPを回復させることもできない。

エスナが複数の状態を回復させる効果があるとはいっても、基本的にひとつの魔法である以上は、その基本的な作用はそれほど複雑ではないはずである。
そこで、エスナが最小限の働きで状態回復ができるように考えていくこととする。

ここからは、エスナという魔法が、それぞれの状態をどのように回復しているのか、また回復できない状態に関してはなぜ回復できないのかについて検証していこう。

回復可能な状態

まずは、回復可能な状態について考察する。

毒・猛毒

猛毒は毒の強力なものなので、ここでは簡単のために、毒と猛毒を同じものとして捉えることとする。
毒の状態になると、戦闘中には徐々にHPが減少し、移動中には歩くたびにダメージを受ける。

この状態は、毒消しを使うことにより回復することもできる。
つまり、体内に侵入した有害物質を除去することにより、正常な状態に治すことができるのである。
これを魔法で解決するには、体内の有害物質を消滅させるか、有害物質を有害でない物質に変化させればよい。
どちらの方法を用いているのかはわからないが、後の考察と類似性を持たせるために、後者が妥当である。

つまり、エスナという魔法は、体内の有害物質を有害でない物質に変化させることによって、毒の状態を回復しているのである。

眠り

眠りとは、その名の通り眠っている状態である。
眠っている間は行動不能となる。
エスナ以外では、物理攻撃をくらった場合にも回復する。
また、自然回復することもある。

眠っている人を起こすには何らかの刺激を与えればよい。
しかし、このゲームでは魔法による刺激では眠りから覚めることは無い。
この理由について考察すると、さらに多くのスペースをとってしまうので、ここではやめることにしよう。
とりあえず、エスナは単純な刺激により眠りを覚ましているわけではないと仮定しよう。

実は、眠るという行為は医学的にも完全には解明されていない。
確かなこととしては、眠っている間は脳波の状態と脳内物質の状態が変化しているということである。
そこで、眠りを与える脳内物質をなくすことによって、眠りを覚ますことができそうである。
つまり、毒と同様の手法により、眠りを覚ますことが可能となる。

エスナという魔法は、脳内にある眠りを与える物質を別の物質に変化させることによって、眠りの状態を回復しているのである。

麻痺

FFシリーズにおいては、麻痺という状態になると行動不能になる。
麻痺の原因として考えられることは、有害物質による場合、血液の循環が悪い場合、神経等に障害がある場合などがある。

有毒物質による場合は、毒と同じ方法で状態回復が可能である。

血液の循環が悪い場合は、普通は一定時間経過することによって回復する。
長時間正座していた場合などに、足が痺れて自由に動けなくなることがあるが、しばらくすれば正常な状態に戻るはずである。
血液が正常に流れることによって、筋肉に酸素や栄養が運ばれ、同時に二酸化炭素や疲労物質が筋肉から運ばれるので、正常な活動ができるようになるのである。
エスナを使った場合は、瞬時にこの状態が回復する。
つまり、エスナによって血流が正常になるか、筋肉内の物質が変化しているということになる。
血流を正常にするためには、細胞を活性化させ、新陳代謝を活発にするという方法がある。
しかし、これでは体力まで回復してしまう恐れがある。
後で述べるが、エスナには体力回復の効果はないのでこの方法を採用するわけにはいかない。
一方、筋肉内の二酸化炭素や疲労物質を酸素や栄養に変化させるという手法は、これまでの議論との整合性を保つ意味でも、非常に有効である。
ここでは、筋肉内の物質を変化させているのだとしよう。

神経等に障害がある場合も麻痺状態になるが、これは先天的なものや、不治の障害であることが多い。
FFシリーズでプレイヤーが扱うキャラクターの中には、このような障害を持っている者はいないはずである。
よって、FFシリーズにおける麻痺にはこのようなものは含まないと考えよう。

ここでの結論として、エスナという魔法は、体内の有害物質を無害な物質に変化させ、特に筋肉内の二酸化炭素や疲労物質を酸素や栄養に変化させることによって、麻痺の状態を回復しているのである。

沈黙

沈黙という状態になると、一切の魔法が使えなくなる。
「沈黙」という名称から考えても、しゃべることができなくなるのであろう。
人間がしゃべれなくなる原因は、先天的な障害や失語症などが考えられるが、麻痺のときにも述べたように、プレイヤーの扱うキャラクターにはこのような障害を持つ者はいない。
沈黙という状態になる原因は、もっと別のところにあるのだろう。

たとえば、声帯に何らかのダメージを受けたときには、しゃべることができなくなる場合がある。
実際、風邪などで、のどの調子が悪いときに、カラオケなどで声を出しまくると、ほとんど声が出ない状態になることもある。
沈黙という状態は、何らかの要因によって声帯が変質して声が出せない状態であるとしよう。

ところで、エスナによって、腫れている声帯を元に戻しているとすると、声帯以外の腫れている部分にも適用できそうである。
これでは、エスナでHPの回復をすることが可能となってしまう。
つまり、沈黙における声帯の変質は、単純な意味で腫れているのとは異なるはずである。

仮に、有害物質によって声帯が変質し、沈黙が引き起こされると仮定すると、非常に都合が良い。
そこで、沈黙の原因が有害物質であるとする。

そうすると、エスナという魔法は、声帯を変質させている有毒物質を有毒でない物質に変化させることにより、沈黙の状態を回復していると結論付けられる。

忘れる

忘れるという状態になると、一切の魔法が使えなくなる。
その点では沈黙と同じであるが、これほどまでに名称が異なっているのだから、異なる要因によるものであろう。
また、忘れるという状態はとんかちを使うことで回復できる。
おそらくは、強い衝撃を与えることによって回復するのであろう。
一方、沈黙はやまびこそうを使うことで回復する。
回復方法がこれほどまでに異なるのだから、やはり沈黙と忘れるは大きく異なる状態なのである。

忘れるという状態の要因として考えられることは、記憶喪失である。
とんかちによるショックで治療できる以上、脳の損傷などの無い軽度の記憶喪失であろう。
このような記憶喪失は、脳内物質の状態が正常でなく、脳内での情報処理がうまく行われていないことが原因のひとつとして考えられる。
つまり、脳内物質の状態を正常にすることで治療が可能となるはずである。
エスナによって、過剰な脳内物質を減らし、不足しているものを補うことで、この状態を回復できる。

つまり、エスナという魔法は、過剰に分泌している脳内物質を不足している脳内物質に変化させることによって忘れるという状態を回復しているのである。

暗闇・盲目

暗闇という状態も盲目という状態も、基本的には同じで、物理攻撃の命中率が下がった状態になる。
これは、目が見えなくなった状態とも考えられるが、そのような状態では命中率が下がるどころではなく、攻撃はほとんど当たらなくなるだろう。
そこで、目が見えないのではなく、見えにくくなると考えたほうが妥当である。

ちなみに、この状態は、目薬を使うことによって回復する。
完全に見えないという症状が目薬ごときで完全回復するというのも考えにくいので、やはり見えにくくなっていると考えよう。
「盲目」という名称も、便宜的につけられただけであり、完全に見えないわけではないということである。

目薬で治療できる以上、目の中に何かが入っていることにより引き起こされると考えられる。
仮にそれが有害物質であるとすると、これまでの議論がそっくり使えることになる。
よって、ここでは、暗闇や盲目という状態は、目の中に有害物質が入ることにより、目が見えにくくなった状態とする。

そして、エスナという魔法は、目の中の有害物質を無害な物質に変化させることで、暗闇や盲目の状態を回復させているのである。

混乱

混乱という状態になると、キャラクターが操作不能となり、味方に攻撃をしてしまう。
この状態は、物理攻撃をくらうことによって回復する。
物理攻撃をくらう程度のことで回復するのだから、それほど深刻な混乱ではないのだろう。

ここまで読んできた人なら想像がつくかもしれないが、この混乱も有毒物質での説明が可能である。
麻薬常習者は幻覚を見ることがあるという。
その幻覚は、特殊な脳内物質が分泌されることにより引き起こされる。
同様に、混乱という状態は、混乱をもたらす脳内物質が分泌している状態であるとする。
この物質は、物理攻撃を受けたときに分泌される脳内物質により打ち消されるとしよう。
これで、納得のいく説明が可能となる。

もちろん、エスナという魔法は、混乱をもたらす脳内物質を別の物質に変化させることによって、混乱という状態を回復させているのである。

呪い・老化

呪いという状態になると、様々な能力が低下する。
これまでの議論では、現実の人間の体のことを考えながら展開してきた。
しかし、この呪いという状態は、(異論のある人もいるかもしれないが)現実の世界には存在しないであろう。

ところで、老化という状態になっても、様々な能力が低下する。
老化という状態はエスナで治すことができるのであるが、普通の老人にエスナをかけても若返ることは無いであろう。
つまり、「老化」という状態は、本当に老化しているのではなく、老化してるようになる呪いの一種と考えることが可能なはずである。
そこで、老化という状態は、呪いの一種であると考えることとする。

ここで、呪いという状態の原因を、魔法的なものによる悪い影響であるとしよう。
具体的に、どのような影響によって呪いの状態になるかはわからないが、エスナによって、その影響を打ち消すことができることになる。

ここまでのパターン通り、エスナという魔法は、悪い結果をもたらす魔法的な影響を無害なものに変化させることによって、呪いや老化という状態を回復させているとする。

小人・カエル・ブタ・カッパ

小人という状態になると、小人に変身し、攻撃力や防御力が大幅に低下する。
カエルという状態になると、カエルに変身し、攻撃力や防御力が大幅に低下するだけでなく、魔法はトードという魔法しか使えなくなる。
ブタやカッパという状態になると、それぞれブタやカッパに変身し、魔法はそれぞれポーキーとカッパーという魔法しか使えなくなる。

もちろん、現実の社会ではこれらの状態になることは無い。
ゲームの中だけの話である。
しかし、外見まで大きく変わってしまう以上は、呪いや老化のような、魔法的な要因だけで片付けるのは乱暴な気がする。

人間の外見が完全に変わっているのだから、根本的な部分が変化しているのであろう。
その根本的な部分のひとつとして、遺伝子が考えられる。
非常に考えにくいことであるが、これらの状態になると、瞬時に遺伝子が変化し、体中の組織が再構成されると考えよう。
ここで、カエルやブタになっても人間であったときの意志などは残っているはずなので、本物のカエルやブタになったのではなく、それに似た何かに変身しているのだろう。

さて、その状態を回復するためには、遺伝子を組み替えて元の状態に戻す必要がある。
よって、エスナは遺伝子を変化させることができるはずである。
ちなみ、これまでの議論で、エスナの基本性質が「変化」であると考えてきた理由はここにある。
有害物質であれば消去すればいいかもしれないが、組み変わった遺伝子を消去しても元の状態に戻ることはできない。
それゆえに、エスナが変化の魔法であるという前提で、考察を行ってきたのである。

ともあれ、エスナという魔法は、組み変わった遺伝子を元の状態に変化させることで、小人・カエル・ブタ・カッパという状態を回復させているのである。

石化

石化という状態は、体が石のようになって、一切の行動ができなくなった状態である。
この状態になると、敵からの攻撃なども受けつけなくなる。

石化という状態も、現実には起こり得ない。
皮膚が石のように硬くなってしまう病気があるそうだが、石化はそのような生やさしいものではない。
体全体が、本当に石のようになって動けなくなってしまうのである。
しかし、これは本当の石ではないと考えられる。
エスナで石化が治るのだから、石化によって本当に石になっているとしたら、普通の石や化石などにエスナをかけると、生物に変化してしまうことになる。
流石にそれは考えにくいので、石化とはいっても、本当の石になっているわけではないとする。
おそらく、前述の小人やカエルなどと同じように、遺伝子的な変化によって変身しているのであろう。
そう考えれば、小人やカエルと同じ原理で石化を治すことが可能となる。

つまり、エスナという魔法は、遺伝子を元の状態に変化させることによって、石化の状態を回復しているのである。

回復不能な状態

ここでは、回復不能な状態について考えてみよう。

HPの回復

HPは体力を表している。
この値が0になると、死亡や戦闘不能(特殊な場合はゾンビ)の状態になる。

エスナではHPを回復させることはできない。
HPを回復させるにはケアルなどの別の魔法を用いる必要がある。

つまり、エスナという魔法には、体力を回復させる効果はないということになる。

死亡・戦闘不能・ゾンビ

死亡とは、HPが0になって死んでしまった状態である。
戦闘不能とは、HPが0になり、戦うことができなくなった状態である。
HPが0になると、FF3以前は死亡、FF4以降は戦闘不能となる。
ゾンビとは、HPが0になり、操作不能となって味方に攻撃してくる状態である。

これらの状態に共通していることは、HPが0になって、本来は戦えなくなった状態であるということである。
これらの状態はエスナで回復することはできない。
エスナは、HPの回復さえもできないのだから当然のことである。

魔法効果による状態変化

魔法効果による状態変化は、ストップなどの悪影響を及ぼすものと、ヘイストなどの良い影響を及ぼすものがある。
どちらもエスナで元に戻すことはできない。
魔法効果を打ち消すには、デスペル(ディスペル)という魔法を使う。

エスナという魔法は、魔法そのものを打ち消すことはできないのであろう。

まとめ

以上のように、エスナという魔法に関する考察を行ってきた。
基本的に、エスナという魔法は、悪いものを悪くないものに変化させる魔法であるということがわかったと思う。

注意すべきことは、エスナを使っても逆の変換はできないということである。
例えば、何の異常もない人にエスナを使っても、その人を毒にしたり、カエルにしたりはできないのである。
ということは、エスナという魔法は、何が有害で、何が有害でないかということがわかっているのである。
さらに、小人などの治療の際に遺伝子変換をして元の状態に戻せるということは、元の遺伝子情報を何らかの手段により知ることができるということである。
私の仮説としては、遺伝子が組み変わって変身してしまった後も、元の遺伝子情報が体の中に備わっている、と提案する。
エスナを使った場合は、その情報を調べ、元の遺伝子に戻しているのであろう。

ここで、エスナという魔法の性質をまとめておこう。
  1. 体内(局所的には脳・筋肉・声帯・目)の有害物質を無害な物質に変化させる。
  2. 時には、過剰な物質を不足している物質に変化させる。
  3. 魔法的(魔法そのものではない)な悪影響を無害なものに変化させる。
  4. 組み変わった遺伝子を元の状態に変化させる。
  5. 有害/無害の識別ができる。
  6. 元の遺伝子情報を調べられる。

おわりに

この文章は、ほとんど何も参考にせずに、自分の記憶を頼りに書いた。
おそらく、間違っている点や不足している点があるだろう。
それについてはご容赦いただきたい。

また、仮説に仮説を重ね、大いに無理のある論理展開であることも重々承知である。
実際、どう説明して良いかわからなかった部分などには、ほとんど触れずにごまかしている。
私の仮説などよりも、もっと納得のいく説明のできる人も大勢いることであろう。
今後、もっと精進してきちんとしたものを書けるようになりたいと思う。

最後に、こんなつたない文章を読んでくれたあなたに、心から感謝したい。