<タイトル未定 Episode0> 2J 平田春彦 ――はあっ、はあっ、はあっ、はあっ 僕は暗闇の中を無我夢中で走っていた。自分の背後から迫ってくる何かから逃げるために。 「うぁっ。」 どたーん 既にかなりの距離を走っていて体力の限界にきていた僕は、ついに足をもつれさせて転んでしまった。 勢いよく転んだので手や足をすりむいてしまいかなり痛かったが、僕はその痛みに気をまわす事が出来なかった。 後ろを振り向くと黒い霧みたいな何かが僕の目の前に迫っていたからだ。 黒い霧みたいな何かはゆっくりと僕に近づいてきた。 「あ、あ、あ・・・。」 僕はもはや悲鳴をあげる事すら出来なかった。 僕の目の前に迫ってきている黒い霧みたいなものが何なのかはよくわからなかったけど、僕を殺そうとしている事は本能的にわかった。 僕、ここでこいつに殺されちゃうんだ。 そう思って目をきつく閉じた瞬間、この世のものとは思えぬ悲鳴が聞こえた。 僕が思わず目をあけてみると、僕の目の前には黒いマントを纏い大きな鎌を持った男の人が僕に背中を向けて立っていた。 「もう大丈夫だ。悪霊は始末した。」 男の人がこっちを向いて僕に微笑みかけながらそう言うと、僕は助かった事で気が抜けたのかその男の人に抱きついて大声で泣いた。 男の人は、僕が泣き止むまで黙って僕の頭を優しくなで続けてくれた。 僕が泣き止むと、男の人は僕をマントで覆いしっかりつかまってろと言った。 僕がその言葉どおり男の人にぎゅっと捕まると、一瞬ふわっとしたまるで体が浮き上がるような感じが僕の体を包んだ。 僕の体を包んだ不思議な感じがなくなると、男の人はもういいぞと言って僕を覆っていたマントを開いた。 僕が恐る恐る男の人から離れて辺りを見てみると、そこは僕の家のすぐ近くだった。 「すごいやおじさん。おじさんって魔法使い?」 僕が思わずそう聞くと男の人は、 「いや、私は死神だ。」 と微笑みながらいった。 「ふーん、じゃあおじさんはいい死神なんだね。だって僕を助けてくれたんだから。」 僕がそう言うと、 「そうかもな・・・。」 男の人はちょっと照れくさそうに笑いながらそう言った。 「さて、私はもう行かねばならん。悪いがお前が今日経験した事は忘れてもらうぞ。」 男の人がそう言うと僕は、 「おじさんの事も忘れちゃうの・・・?」 と言った。 「ああ、だが何かの縁があれば思い出す事があるかもしれん。」 「本当?じゃあ思い出したらまた会ってくれる?」 「思い出したら、な。」 男の人は僕の言葉に微笑みながら応えると、僕の頭に手をかざした。 その手から光が発せられたかと思うと、次の瞬間には男の人の姿は消えていた。 そして僕は男の人のことや悪霊に襲われた事をすっかり忘れていた。そして転んだ時に出来た傷も治っていた。 僕は家に帰るとお父さん達にひどく怒られた。 でも怒った後で泣きながら僕の事を抱きしめてくれたので怒られた事なんかすぐに忘れてしまった。 その後、僕は中学生になるまでは何事も無く普通に暮らした。 そして中学校に入学した日の深夜、僕はかつて自分を助けてくれた死神と再会した・・・。 どうもこんにちは。 これはいずれ書こうと思っているオリジナル小説の外伝みたいな物です。 会誌のネタが無かったので突発的に思いついて書きました。 何せ突発的に思いついて書いたものなんで出来はよくないです。(笑) 来年以降も似たようなものを会誌のネタにする事になるのかなあ・・・? 大して面白くない話ですが最後まで読んでくれた人にはありがとうと言っておきます。 ではまた。