WAVEファイルで遊んでみる
1年C科 板垣幸太 

概要

この文章は、音楽の知識なんぞはほとんどないが、それでも音を扱うことにあこがれている方へ捧げるものです。
基本的に必要なものは、自分のセンスおよび快適な環境ということで。



その1、環境をととのえてみる

まず、wavファイルを編集できるための環境が必要です。
そのためにはvectorさんへ赴いて、そのためのソフトをダウンロードする必要があります。
「wav」だとか「編集」だとかで検索すれば、 きっと良いフリーウェアが見つかるでしょう。



その2、NHKラジオで遊んでみる

さてさて、実際に音を編集しようと思っても、その元がなければお話になりません。
で、ここで役に立つのがNHKラジオ。
とくにニュース。 彼らはたんたんと同じテンポで喋ってくれるので、実に良い教材となります。

ただしこの教材を使用するのは個人の範囲内にとどめておきましょう。
決して編集したものを自分のサイトにアップなどしてはなりません。
...捕まる恐れがありますので。


その2の1、録音してみる

さてさて、早速教材をパソコンに取り込みましょう。
取り込むのに必要なソフトを探すのに、またまたvectorさんにお世話になったりするかも知れません。

ニュースを放送している時間なんかは新聞を読めばわかります。
なに?新聞をとっていない?まぁどうにかなります。
少なくとも2時間に1回はやってるはずなので。

で、録音方法についてはここではとやかく言いません。
家に眠っている適当なケーブルを駆使すれば、たいていはうまくいきます。
もし家にない場合はモノラルミニプラグとモノラルミニプラグを接続する ケーブルを買ってくると良いです。

また、もし雑音がひどくてお話にならないようなら、雑音源を早期発見、治療に移りましょう。
といってもやることは至極簡単。
ラジオをもってうろうろしましょう。
意外とこれだけでも効果はあります。
アンテナだけでなく、位置やラジオの向きもいろいろ考察してみると良いです。

しかし、これだけで雑音が駆除できないようなら、雑音源を絶ちます。
主な雑音源は電化製品です。
蛍光灯を消すだけでも大分変わることがあります。

しかし、もっとも大きな雑音源はパソコンだったり。
ということですので、できるだけ雑音源から離すことが重要ですが、思いきってまずテープに録音して、そのあとパソコンに録音、ということも重要な手段ですので、記憶の彼方にでもとどめておくというのも手です。

って結局結構とやかく言ってますなぁ。


その2の2、音を眺めてみる

さて、お話を進めるために、無事に録音できたと仮定します。
ここで初めて波形というものに遭遇するわけです。
未知との遭遇ですよお客さん

しかしこの波形というもの、実にすなおなやつなのです。
とりあえず、録音したものを再生してみることにしましょう。
波形を眺めながら。
すると、まさに予定通り、振幅が大きくなったときには大きな音を出し、振幅が小さくなったときには音は小さくなるという、まさに何を解説すればいいのやら。

ところで、波形をどんどん拡大していくと、だんだんと波形の区切りが見えてくるはずです。
この波形の区切りこそが文節の区切り、アナウンサーは文節の区切りなどは徹底してくれます。
しかもNHKならBGMも入らない。
教材としてここまで適切なものはほかにはないですよ。


その2の3、波形を切り張りしてみる

ここまで来れば、あとはセンスの見せどころです。
あなたの手によって、NHKのアナウンサーが 「日本の主力ロケット、中村俊介選手が...」 などと意味不明なことを喋ってくれること請け合いです。

波形を切り張りする際の注意をいくつかあげましょう。 まず、無理な切り張りはしないことです。
たとえば、「中村俊介選手が」と「台風の影響で」という それぞれ別の文節があったとします。
これをくっつけて「中村選手の影響で」とするのは危険です。
思いの外イントネーションがおかしくなってしまったり、テンポが悪くなってしまうことが多々あります。
これは美学に反する行為で、大変よろしくありません。
いかに与えられた材料でうまくやるか、というのも大事なことですから。

あと、冒頭の「s」の音をうっかり消してしまわないようにしましょう。
「s」の音は、それこそノイズであるかのように小さいものです。
しかも、波形を見るとわかるのですが、「s」の音はそれに続く母音と多少離れていてまさに引っ掛かるポイントが満載です。
「桟橋に行きました」が「鞍馬しに行きました」になってしまうのはだれだって嫌でしょう。
ちなみに、この子音というのは「s」に限らず、波形で見るとたいていが小さいものですので
見落とさないようにしましょう。

ここに書いた2つのことは、どちらも私が以前よくやっていたミスですので。


その2の4、包括その1

これで、あなたのセンスを試すことができました。
あなたはいま、妙な達成感に包まれていると思います。
しかし、その達成感は決して一般に向けられてはならないものです。
そこを耐えてこそ真の猛者であります。
どうしてもという場合でも、せいぜい友人を呼んで聴かせる程度にとどめておきましょう。



その3、音楽に溶け込ませてみる

さてさて、今度は別のお話。
テクノやらハウスやら、そっち系の音楽にボイスが使われていることがあります。
NHKラジオや普段の会話をそれに使ってみようというお話。
ここから先のお話は、オーディオの編集もできるシーケンサーがないとかなりきつくなります。
が、時間と根気が無駄に余ってる人はなくてもできるかもしれません。


その3の1、楽曲を用意してみる

ループ素材やMIDIを駆使して楽曲を作ってみましょう。
もっとも、どこかから適当に拾ってくるのも十分にありです。
この時、BPM(Beats per Minute、1分間に四分音符を何回打てるか)に注目しておきましょう。


その3の2、計算のお時間です

ここからは実際に私の作業と平行してお話を。
なお、ボイスは当サークルの煮汁王氏に提供していただきました。多謝。

さて、楽曲を適当に用意して、 とりあえずやりたかったのは左右から交互に飛び交うリフレイン。
そのリフレインを作るために「素人には...」という文節の 「素人」の部分を用いることにしました。

普通の会話で、すべての文字が均一な速度で喋られてるなんてことは存在しません。
しかし、今回のテーマからして、リズムに合わせてかっこ良く喋らせたい。
というわけで、この「素人」を「し・ろ・う・と」とそれぞれの文字を 同じ速度で喋るモノを一区切り、 かつこの一区切りで2分音符分の長さに加工しようとしました。
つまり、「し」「ろ」「う」「と」それぞれが8分音符分の長さを持つわけです。

で、これを計算します。
BPM=188とすると、一小節分の長さは
 60÷188×1000=319.0 (ms)
となるわけです。
つまり、1文字分の長さはこれを2で割ったもの、すなわち 159.5 (ms) ですね。

それでは本題。
すべての文字を159.5msにきっかり合わせるというのは、いろいろ無理が生じます。
先ほどのNHKラジオでも無理はするなと言ってるのだし。
というわけで、ずるできるところを考えるわけです。

まずは「ろう」に注目。
「しろうと」という言葉には幸い「ろう」という「のばす音」があります。
「しろうと」=「しろーと」なのです。
ということは、「ろ」と「う」の間ははっきりとしない、すなわち159.5msきっかり「ろ」を喋らずに「う」に移行しても良いということ。
「ろう」はそれ一つで二文字分そのものとみなしてよいわけですよ。

さらに、つぎは「し」に注目。
「し」の子音は、言うまでもなく「s」です。
この「s」を「k」の音と波形を比較すれば良くわかりますが、「k」の音は10msも続かないパルス的な音であるのに対し、「s」は40ms以上続く持続的な音なのです。
実際、サンプルの「し」の音には70msほど「s」の音が含まれていました。
70msの「s」はどこをとっても同じであるので、いくらかちょん切ってしまえるのです。
ここでちょん切ったところにフェードをかけるとより自然になります。

さらに、「s」と「i」の音の間には、いくらか間があると、先ほどのNHKで述べました。
この無音を取り除いて、「s」の音をちょん切ったとしても、ちゃんと「し」の音として聞こえるのです。

ということで、
 wav開始〜「ろ」の手前:「ろ」の手前〜「と」の手前=1:2
となるように「し」を調整してみました。
上の式を言い換えますと、「し」:「ろう」=1:2ということです。
実際は、この「ろう」が222msであったので、「し」を111msにうまく加工して一段落、といったところでしょう。

さて、ここまでやった結果、それぞれの文字が8分音符分の長さになったわけです。
しかし、ひとつ忘れていることがあります。
「と」の長さの調節です。 サンプルでは「素人には〜」と喋っているわけで、「と」のあとにすぐ、不要な「に」が存在します。
そのおかげで「と」の部分は71ms、ほかの音に比べて3分の1以上のすきまがあります。

ここでタイムストレッチという必殺技の出番です。
タイムストレッチは音の音程を変えずに長さだけ変えることができるすぐれもの。
ただし、かけすぎるとだんだん音がおかしくなってしまうので、できるだけ避けるようにしたいのです。
というわけで、今までずるできる方法を探していたわけですよ。
ちなみにこいつもまたvectorさん...。

で、71msを111msに引き延ばせばいいわけです。
 71÷111=0.64 つまり64%の速度で「と」を喋らせればいいわけなのです。
そうとわかれば早速加工。

しかし、64%でやるとどうにも気持ちが悪いので68%で。
「しろうとしろうとしろうと...」とリフレインさせるので、「と」と「し」の間に微妙なすきまがあった方が良かったようです。
これでようやく同じテンポで喋る「し・ろ・う・と」ができました。

あとはこれをBPM=188に合わせるだけ。
始めの計算より、BPM=188のときは一文字分の長さは159.5ms、ここまでで出来てるファイルでは111ms。

はい電卓。
 111÷159.5=0.70
というわけで、ここまでのファイルを70%の速度で録音し直せば、無事BPM=188の「し・ろ・う・と」の完成です。

この一連の作業で、ほとんどのことが応用できます。
イコライザーなどで当たり障りのない音に調整したりしてますが、
そこはほとんど趣味の問題と言っても過言ありません。
お好みでディストーションなりディレイなりご自由にどうぞ。



その4、まとめ

さて、この文章はここで終りです。 文のみでしたがここまでおつきあいありがとうございました。
では、このCDに収録されているはずである、 「しろうと」のリフレインをごゆるりとおたのしみ下さい。