のじゃ式 ドット絵の描き方

文・画:のじゃ
nojaizm@yahoo.co.jp
http://www3.to/noja/




○ 0、はじめに ○ 

 最近、まわりで絵師増加作戦などが行われたせいか「ドット絵の描き方がわかんねー」とか「影の付けかたがわからんー」とかいうような声がよく聞かれる(気がする)ので、とりあえず自分流のドット絵の描き方を紹介してみようかなーと思います。
 なお、これから紹介するやり方はあくまでものじゃ流であって、まちがっても一般的な方法だったり、ベストなやり方だったりはしないので気をつけましょう(えー)。


○ 1、手順 ○ 

 まずドット絵をかく手順ですが、基本的には以下のようになります
     1:紙に元絵を描く
          1:大雑把に下描きをする
          2:いったん消す
          3:ラフ画を描く
          4:ペン入れをする
     2:取り込み
          1:スキャナで取り込む
          2:色を付ける
          3:縮小する
     3:ドット打ち
          1:塗りつぶす
          2:影を入れる
          3:描いてないパーツがあれば描き足す
          4:残像(?)を描く
 ではこの流れに沿って描き方をみていきましょう。
完成図


○ 2、描く ○ 

2.1、紙に元絵を描く 

 世の中には元絵無しでいきなりドットを打つ人もいますが、のじゃはオススメしません、特に初心者の人には! 下描きをするとイメージも固まりますし、ドットを打つときにも参考になるからです。まぁ、イメージはあらかじめ固めておくべきですが。
 あと、なんだかんだいって紙に描いた方が修正が楽なのも大きなポイントです。
 というわけで、まず元絵の描き方から見ていくことにしましょう。ちなみに、これから紹介するのはだいたい4頭身ぐらいの絵の描き方です。描きたい絵の頭身が大幅に異なる場合にはあまり参考にはならないかもしれません(えー)


2.1.1、下描きをする 

 まず、どんなポーズにするのか、を丸で大雑把に描きます(左の図のような感じで)。基本的に首はかかなくて平気です。
 ただ、棒人間はやめましょう、体のボリュームがつかみづらいので。
 左の図では左腕が顔の前に来ているように見えますが、実際は奥にあります。こういった前後関係などはあまり気にする必要はありません
 隠れてしまう部分は気になるのなら消してしまってよいのですが、ラフ画を描いてみると隠れるはずだった部分が隠れなかった、みたいなことも起こるので残しておいた方が無難です。
 また、左足の膝〜足首の部分がやけに短いですが、これは足が奥に行っているからです。このように奥行きのある絵を描くときにはそのパーツを円柱だと思って描きましょう。右図の1のようにまず上底と下底を描き、次に2のように側面の線を描きます。これだけでは分かりづらい場合には3のように線を描き足してください。
 あと、顔や体などの向きなどが分からなくなりそうな場合には中心線(?)を描いておくと後で分かりやすいです。
 なお、細かい動きやコマ割などもこの時点で決定します。ラフ画の段階でもある程度修正が効きますが、前後の絵に絡んでくる場合もあるのでこの段階で調整した方がいいです。トレス台とかあると便利かもしれません。
 あと枚数ですが、主に平行移動する動作(立ち状態とか)は枚数少な目で描き、体をひねるような動作(回し蹴りなど)は多めに描くといいです。


2.1.2、いったん消す 

 せっかく描いた下描きですが、このままではラフ画が描きづらいのでいったん消します。
 もちろん完全に消してしまうわけではなく、薄ーく残してして消すわけですが、少し問題があります。普通、絵を描くときにはBから2B、場合によっては4B位の鉛筆やシャープペンを用いるため、軽く消そうすると線がなびれてしまい、へたをすると元の絵が分からなくなってしまいます。
 こうならないように消しゴムで上から叩くようにして消すとよいです。専用の消しゴムもあるそうですし、人によってはネリケシをつかうこともあるそうです。


2.1.3、ラフ画 

 次はラフ描きです。描く順番は、頭→体→腕→足の順が無理が無くていいと思います。右図もこの順番に描いてあり、そのために右腕で隠れるはずの部分は描かれていますが、左腕は頭で隠れるので描いていません。
 下描きの時は隠れる部分も残しておいた方がいいと言いましたが、今回は消した方がいいかもしれません。
 なぜかというと、もうこの段階でどこが見えてどこが隠れるかはほぼ確定していますし、次はペン入れなのでうっかり要らない線を描いてしまったりしないようにするためには消した方がよいです。ただ、消してしまうと後で変更したくなったときに大変です。まぁこの辺は自分の好みで決めればよいと思います(のじゃはてきとーにやってます)。
 ではそれぞれのパーツの描き方を見ていこうと思います。


●○  頭  ○● 
1、まずは輪郭を描きます。このとき下描きのマルの7割程度の大きさで描きます。
 これは普通頭身を数える時には髪の毛まで含めて考えるので、それを考えておかないと頭身がおかしくなってしまうからです。
 横顔が描きたい場合は輪郭を右図のようにします。
 ちなみに、おデコのラインまでは描かない人が多いようですが、描くと一味違う気がします。けっこうポイント?
 また、左図の1のように頬を下げアゴを平らにするとディフォルメ率がアップし、逆に2のようにするとリアルっぽく(?)なります(むしろ頭身が変わります)。なお、1のようにした場合は目を大きめに、髪の毛を多めにします(2はその逆に)。
2、次は耳をかきます。
 髪の毛で耳が隠れるキャラでも一応描いておいた方がいいです(髪の目安になるので)。
3、今度は髪の毛を描きますが、後で色を塗るので×のように描いてはいけません(他のパーツも同様で、基本的に閉じた線で描かないと後で大変です)。
 ちなみに、この辺まではほぼどんなキャラを描くときも共通です(細かい髪型は除く)。
4、そのキャラ独自のパーツを描きます。今回はモミアゲとカチューシャです(笑)。
 ちなみに、普通はここまで描いたら体を描き始めてしまいます。
5、今度は目をかきます。奥側の目は細長くしましょう(手前の目の半分ぐらいの幅で)。
  目の描き方はその人の特徴にもなるので自分の好きなように描けばいいと思います。黒目の部分を多くすると可愛くなるようです。
6、あと眉と口をかけば完成です。ここの出来で表情やイメージがかなり違います。
  ちなみに、のじゃは鼻は描きません。もし描くのなら、こういう絵ならちょっと線を入れるくらいでいいと思います。 

●○  体  ○● 

 体は左のような輪郭をまずかき、それに服を着せます。ただ、ほとんどの服の場合、体の輪郭を描かずに最初から服を描いても割と平気だったりします。体の線が出る服ならそのまま描いても同じだし、出ない服ならそもそも関係ないので。

●○  手足  ○● 

手足も1のような輪郭を描き、そこに服を描きますが、長袖・長ズボンなどを着ているような場合には、やはりそのまま描いてしまって平気です(棒みたいに描けば十分?)。
 ちなみに、腕はまず二の腕の当たりでふくらみ、ヒジは内側はへこみ外側は出っ張り、そこから少しふくらんで手首に収束させます。足は表側ではほぼまっすぐで、ヒザでややふくらみスネでかすかに反り、裏側はモモでふくらんでヒザでへこみ、ふくらはぎで軽くふくらんで足首に収束させます。
 あと、手は2ぐらいに描いておけば十分ですが、ちゃんと描きたいならまず3のように描き、それに4のように肉付けをします。

2.1.4、ペン入れ 

 最後にペン入れですが、これは「やりたくないー」という人が割と多いのですが、のじゃとしてはぜひやった方がいいと思います。やっぱりペン入れをしたのとしてないのとでは、スキャナで取り込んだ結果が全然違いますし、そうなるとドットの打ちやすさがまるで違ってきます
 ではペン入れについてですが、普通マンガではGペンなどを用いますが、この場合はそれだと細すぎて縮小したとき消えてしまいます。かといって太めのペン(サインペンとか)を使ってしまうと、絵が大変なことになってしまってそもそもやる気が萎えたりします(笑…えない)
 ということで、のじゃのオススメは筆ペンです。これならば一本で太い線も細い線も自由にかけるので、輪郭などは太く、髪の毛や顔などは細く描くことができます。ただ墨の出が悪いと線がかすれるわ先割れするわ、かといって出がよすぎると線が太くなりすぎたり乾きが悪くなったり墨がたれたりと、扱いはちょっと難しいです。

 さてペン入れの仕方ですが、まず必要なのは集中力です。
 いや冗談ではなくて、なにしろやり直しがきかないので真剣にやらないとダメなのです。そしたらまず椅子を思いきり下げて顔と机の距離をなるたけ減らしましょう。必要ならば思いきり前傾姿勢になるのもアリです、やりすぎは禁物ですが。
 で、試し描きして筆ペンの具合を確認し墨の出が悪ければ軸を押し、よすぎるようならチリ紙で墨を吸い取るなどして調節します。
 準備が出来たら手前側から順にペンを入れていきましょう。右の図なら右腕→頭→体→左腕→右足→左足の順です。ちなみに、普通に描きやすい所から描いて交差している部分だけ手前から描く、というのもアリです(頭→右腕→左腕→体→足といった感じで)。
 あと、人間の手は上から下への線はきれいに描けますが、それ以外の線は難しいので、必要に応じて紙を回しながら描きましょう。
 描き終わったら消しゴムをかけるのですが、ちゃんと乾いてからにしましょう。また、あまり強く消しゴムをかけると薄くなってしまうので気をつけてください。



2.2、スキャナで取り込む 

 さて、元絵が描けたら次はスキャナで取り込みます。
 ここはとくに難しいことはないと思いますが、取り込むときは上に重しを乗せましょう。これがあるのと無いのではけっこう違う気がします。重しとしては、やはり辞書や電話帳が適当でしょう。
 で、取り込んだらまずモノクロにしてから256色にし、パレットを適当な物に変えて色を塗っていきます。必要なら多少修正しましょう。この色塗りは縮小した後各パーツを分かりやすくするためなので、影などはつける必要はないですし、細かく塗る必要もないです(のじゃは一応ちゃんと塗りますが)。
 あと、この辺は使うツールによって変わってくるのですが、パレットの1番を髪の色にしておくと、全体がその色になるので、細かい部分の多い髪の毛を塗らなくて済みます。
 色が塗れたら縮小です。他の絵があるならそれに合わせましょう。この時合わせるのは顔などの大きさではなく、体の大きさや手足など全体のバランスです。顔のサイズが多少違っても簡単に修正できますが、全体的に違うとそうはいかないので。
 また、このとき高級なツールを使うと中間色を補われたりするので気をつけましょう。
 ちなみに、のじゃはだいたい20〜25%ほどに縮小し、タテ幅を75〜80ドットくらいにします(まっすぐ立っている場合)。キャラの身長から考えて1ドット=2cmくらいが目安でしょうか。



2.3、ドット打ち 

 ではここからカンジンのドット打ちに入ります。
 のじゃのオススメツールはD−Pixedです(フォトショップなども多いようです)。基本的な機能はそろってますし、レイヤもあれば右クリックがスポイトなのも便利というスグレモノです。ただし、範囲選択後ちょっと他をいじって選択解除すると変なところにコピーされたり、アンドゥーが1回しかできなかったり、表示の拡大縮小のときに迷子になったりしますが(えー)。あやしく思ったら即アンドゥー、保存する前に必ず変なことになってないか確認、の2つに気をつければ多分平気(?)なはずです。
 イヤ正直な話、他のツールはあまり使ったこともないとゆーだけなのですがー(えー)。Windowsのペイント?あんなのでドット打ちなんて物理的にムリですYO。
 というわけでD-Pixedを使うことを前提に話を進めていこうと思います。もちろん他のツールでも大した違いはないハズなのでご安心を。

 まず、表示倍率を700〜900%程度にしましょう。目安としては、ディスプレイに顔を近づけなくても1ドットを判別できるくらい、です。
 あと、1ドットづつ打つツールで描くか、直線を描くツールで描くかという問題ですが、のじゃは前者がオススメです、直線ツールではドラッグ&ドロップで線が描かれるので、これでは自由曲線が描けなくなってしまうのです(もちろん、時には直線も使いますが)
 また、背景色は原色(緑が多い?)になっていることが多いのですが、それだと目が変になるので明度・彩度を落としましょう。

 準備が出来たらドット打ち開始です。
 ドット打ちはペン入れと同じく基本的には手前側から行います。これも描きやすい所から描いていって重なってるところだけ手前からでも平気です。

 まず、各パーツごとに 塗りつぶし→影付け と行っていきます(左図参照)。塗りつぶしでは、そのパーツをフチまできちんと色を塗り、輪郭をはっきりとさせます。直線的なパーツを描くときには直線ツールを使ってもよいのですが、できればそうせず、自由曲線を使って調節した方がよい感じが出ます(特にソデやズボンなど)。
 影は、手や足など細いパーツなら光源の反対側で2〜3ドット程度、その直交方向にはその半分くらい、体など大きめのパーツにはもう少し幅を広めにします。
 色は元の色と比べて明度を−5〜15くらい、彩度を+5〜10くらいがよさげです(色相などによっても変化するので参考程度にしてください)。ただし、これはかなり淡目なので、もう少し変化させた方がよいかもしれません。
 なお、体などの場合はそのパーツの曲線を意識してつけましょう(右上図参照)
 ちなみに、体などに影をつける場合で、ほとんどが影になってしまうような場合には、影の色で塗っておいてそこに普通の色を塗る、とした方が楽ですし、何よりきれいです。
 
 あと頭ですが、はっきりいって下描きは参考程度として、全部描き直す方がいいです。髪の毛や表情など、頭は他のパーツと比べて細かく描き込まなければならないので、取り込んだ物を直すのには難しいものがあるのです。
 具体的な手順は右図の通り、
       1、かたちを整えおおざっぱに色分けする。
       2、髪の毛を描く(この辺ははっきり言ってしまうとてきとーです)
         まぁ、出来るだけそれっぽく見えるように調整してください。
       3、目や口をかいて終了。
         ちなみに口は描く位置や大きさによって表情が大幅に変化します。
         事実上数パターンしかないのでこだわってみましょう。








2.4、仕上げ 

 さて、ただドット絵を一枚描くだけならここまでで完成なのですが、ゲームで使う場合など、アニメーションをさせる場合にはもう少し手を加える必要があります。

 まず、図1のような絵を描いたとします。そしたら、これらをそれぞれレイヤに分けていきます(図2)。もし明らかに他の絵と動きが合わないような絵があるのなら、この段階で直してしまいましょう
 次に手や足など、特に大きく動く部分、というか残像をつける部分にどのような軌跡で動くか、を表す線を描きます(図3)。
図では1つの絵にムリにまとめてあるので分かりづらいですが、本当はそれぞれの線ごとに別のレイヤにするので平気です。

 あとはこの線を参考にして、各レイヤごとに残像をつけていきます
 ちなみに、モーションの種類にもよりますが、残像はかな〜り大きめ、というか長め(?)にして平気です。目安としては、短めにつける場合には1枚前の、長めにつけるのなら2枚前のそのパーツの位置くらいまでつければよいと思います。図4の残像はやや小さめといった感じでしょうか。
 また、最後のモーションなどは残像長め→残像短め→残像ナシの3枚ぐらい(もったいなければ2枚)にすると滑らかになります(戻りモーションがちゃんとしている場合は無くても平気です)
 これで服のスソや髪の毛などを少しゆらせば文句無しです。

 最後に、このまま図4のように並べ直しててしまうとアニメーションさせるときに、残像などがきちんとつながって見えるようそれぞれの絵の位置を調節するのが難しくなってしまいます
 これを防ぐために、並べ直す前に必ず基準になる点をそれぞれの絵に打っておきましょう(目立つ色で1ドット打てば十分です)。

   これで全工程終了です!お疲れさまでした〜。





○ 3、最後に ○

 なんだか最後は駆け足ぎみになってしまった気もしますが、これにて「のじゃ式 ドット絵の描き方」終了です、長々とおつきあいいただきありがとうございました! m(_ _)m
 これを読んで「うぁ、めんどくせぇ」「これくらいならできるかな〜」とか思っていただければ幸いです。

 それでは最後に一言、
「俺は絵師じゃないッ!!
プログラマーだああああぁぁぁぁぁぁぁああああっっッ!!!!」
(えー)