喜びベースによるRPGの設計

四年のカレー

0.前書き

なんだかゲーム紹介だけだと物足りない、というか研究に疲れて現実逃避したいので、適当にもう一つ書くことにしました。たぶん結構偏った内容を書いてると思うので、あんまり鵜呑みにしないで、自分の意思を強く持つようにしましょう。また、ここに書いた文章のほとんどが机上の空論で、実際に実践したわけではありません。仮にここの文章どおりのRPGを作成するとどうなるかは、保障の対象外ですので御注意ください。

1.前提

1.1定義

喜びベース、といっても何がなんだかわからないと思いますので、ここではっきり書いておきましょう。この文章で出現する「喜び」という単語の意味は、プレイヤーがゲームプレイ中に手に入れた報酬(成長)がどれだけゲームに対して有効か、と、定義させてもらいます。苦労して手に入れた武器が大して役に立たなかったらぜんぜん嬉しくありません。そういうことです。つまり、喜びベースによるRPGの設計とは、報酬を手に入れた(成長した)ときにいかに喜べるか、をもっとも重視して設計する思想です。ゲーム全体のバランスとか整合性は二の次です。プレイヤーが喜べればそれで十分なのです。

1.2悪影響

後述しますが、このような手法をとった場合、インフレがひどくなる傾向があります。また、一つ一つの報酬の効果を大きくする都合上、想定より少し成長が足りていなかったり、逆に少し成長しすぎていただけで、ゲームバランスが崩壊してしまう危険性をはらんでいます。バランスを意識しすぎて全然喜べないゲームもつまらないですが、バランスが崩壊しすぎているゲームもまた面白くありません。用法用量を守って、正しくゲームを設計してください。

2.基本

2.1成長量は大きくする

HPが100ある時に、雑魚を狩り続け、苦労の果てにレベルが上がって、HPが2ポイント増えました! ・・・・・・誰が喜ぶでしょうか? 成長量は、プレイヤーが体感してわかるぐらいに大きく取りましょう。

大きく、とはどれぐらいの値をさすのでしょうか。防御力などに関しては難しいのですが、攻撃力なんかだと、たとえば思い切って1割ぐらいアップさせても実際のゲームに与える影響は微量であることが多いです。1割あがっても、二発で倒せる敵が一発で倒せるようになることは少なく、3発で倒せる敵が2発で倒せるようになることも少ないです。できれば、3〜4割ぐらい思い切って上げましょう。2倍になってもいいぐらいです。レベルアップの場合は他のパラメータも上昇するので、こういった過激な上昇はバランス崩壊させやすくしますが、新しい武器を手に入れたときなんかは、このぐらいあがってもバチはあたらないと思います。

2.2成長量は指数関数的に

HPが10しかないときにレベルが上がって、HPが5ポイントも増えました! 5割アップです。かなりの喜びが得られることがわかります。しかし、その後プレイヤーは順調に成長し、HPも100を突破するようになりました。にもかかわらず、レベルアップしても上昇量は5ポイントのまま・・・・・・。5割も上がっていた初期の喜びはどこへやら。これでは悲しくなってしまいます。

後半になるに従い、成長量を上げるのは上の例を見てもわかるとおり妥当な判断です。理想としては、指数関数的に上昇するのが望ましいでしょう。要するに、いつレベルが上がっても攻撃力は現在値に対して一定の割合上昇する、ということです。これなら、後半になってのレベルアップでも、十分喜べる上昇量になります。

2.3インフレする世界

喜びベース的に上記のような方法はとても有効なのですが、いずれにせよ恐るべきインフレを引き起こします。特に、2.2の方式がどれだけ凄まじいかは、指数関数をご存知の方はすぐにお分かりになるかと思います。

次の章では、こういった基本的な要求を満たしつつ、インフレを抑制する方法について書いていこうと思います。

3.実装案

3.1ダメージ計算式を変える

後期のFF等でとられている手法です。FF8では攻撃力の2乗、FF10では攻撃力の3乗が実際のダメージの基準となっています。この方式をとる場合、ステータス画面で見られる見かけ上の攻撃力は、あまりインフレしないで済みます。しかし、実質にはインフレしているのとあまり変わりませんので、ほとんど目くらましだと思ってよいでしょう。

似たような手法として、攻撃力を武器と力の掛け算であらわす、というものがあります。

3.2弱点属性を使う

実際の攻撃力は上げないで、敵の弱点属性を持つ武器などを配置して、結果的に与えるダメージを増加させる手法です。この手法の良いところは、次の地方に移ったとき、増加したダメージを持ち越さなくて済む点です。炎の洞窟で手に入る氷の剣は、その洞窟では有効ですが、次のダンジョンの風の神殿ではそれほど有効ではありません。ここで風の神殿に土の剣を置いて、次の氷の塔では炎の剣を・・・・・・、という風にゲーム全体を作成していくと、プレイヤーの喜びが大きいにもかかわらず、ほとんど攻撃力を上昇させずに済みます。武器だけでなく、そのころのレベルでそのような属性の魔法を覚えさせる、ということでも同様のことが可能です。欠点が少ない優良な手法といえるでしょう。

この手法で気をつけておきたい点は、一つの地方の敵には共通の弱点を必ずつけておく、という点です。せっかく氷の剣を手に入れても、あいつは炎に弱い、こいつは風に弱い、では拍子抜けです。氷の剣が手に入る地方では必ずほとんどの敵が氷属性に弱いように、最低でも氷属性に耐性を持つ敵はいないように設定するべきでしょう。

3.3敵の防御力を高めに取る

防御力が引き算でかかるときに使える手法です。割り算では使えません。敵の防御力をこちらの攻撃力に対して十分高く設定する手法です。たとえば、攻撃力が100のとき敵の防御力が50あった場合、攻撃力が10上がれば、攻撃力は1割しか上昇していませんが、与えるダメージは2割上昇します。同様に敵の防御力が90ならば、与えるダメージは2倍に跳ね上がります。こうすれば、あまり攻撃力を上げなくても十分な喜びが得られるわけです。

この手法では、ゲーム全体へのインフレの抑制も可能です。たとえば、上の例から成長して攻撃力が200になったとしても、そのころの敵の防御力が150あれば、また攻撃力を10上げるだけで与えるダメージが2割上昇することになります。これは極端な例ですが、進行に応じて、攻撃力に対する防御力の比率を上げていくことでインフレを抑えることができます。ただし、加減を間違えると、ちょっと攻撃力の低い魔法使いなどの攻撃が全く通用しなくなることになるので、注意が必要です。

3.4閾値をギリギリにする

実際にはちょっと成長しただけなのに、ものすごく強くなったように見せかける手法です。具体例をあげると、攻撃力が100の時に訪れるであろう地方の敵のHPを105に設定します。すると、攻撃力が10上がるだけで、倒すのに二発かかっていたものが一発ですむようになります。

成功するとものすごく美しい手法ですが、最大の問題は、敵の設定が非常に難しいことです。プレイヤーの到達レベルを見誤ると、最初から一発で倒せたり、いつまでたっても二発かかるようになってしまいます。また、パーティー内での攻撃力等の格差がある場合、設定はさらに困難になります。

これに対するかなり強引な解決策として、とある地方に到達した瞬間のレベルを基準に、その地方の敵の強さを決定させる、という手もあります。レベル連動制に近いですが、地方に到達した後なら、いくらレベルを上げても敵は強くならない点が特徴です。こうすることにより、常に地方到達直後はちょっとだけ敵が強く、すぐに閾値を越えて大きな喜びが得られるような設定が比較的ラクにできます。

3.5成長の回数を少なくする

インフレにより、数字がひどいことになる前に成長を終了させる、という強引な手法です。これを使うと、レベルアップなどの成長が、ゲーム中の一大イベントのように扱われるようになります。

類似の手法として、レベル2になる時は攻撃力だけ上がる、レベル3になる時はHPだけあがる・・・・・・、といった手法が考えられます。これだけ聞くと理不尽に聞こえますが、あげるパラメータをプレイヤーがある程度選択できるようにすると、それほど理不尽には見えません。こうすることで、上げたパラメータだけは目に見えて強くなるように設定しても、それほどインフレが進行する前に成長を終了させることができます。

3.6インフレを許容する

別にいいじゃん、最初のHPが10で、エンディングでのHPが100,000あっても、という、悟りに達するというか、開き直ってしまうのもアリです。ごちゃごちゃ考えないで、ありったけの喜びを提供してあげましょう。ただし、インフレによるゲームバランスへの悪影響なども理解し、覚悟した上で開き直るようにしてください。

4.後書き

と、いうわけで、ずいぶんと適当に書き殴ってしまいました。かなり偏ったことを書きましたが、こういう考え方もあるんだ〜、この考え的にはどうなんだろう、と少しだけでも意識して作ってもらえれば、もう少しできあがるゲームは面白くなるんじゃないかなぁ、と勝手に思っています。何事も極端なことは良くありませんが、たまには極端なことも考えて今の自分の立ち位置を見直して見ましょう。こんな駄文に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。