ポケモン対戦新理論〜戦略分類論と、それに基づいたパーティ構築〜

4C 井上 尚亮


まえがき

 初めまして、井上尚亮と申します。X680x0同好会では春と夏の長期休業中に合宿があり、今年はその合宿中のイベントとしてポケモン大会がありました。春は参加人数が2人だけだったのですが、夏では約8人程度集まりトーナメント対戦をすることができました。そこで私は「シングルバトル 6匹見せ合いから対戦させる3匹を選ぶ」というルールのトーナメントにおいて優勝することができたのですが、これは私独自の新理論に基づいてパーティを構成した結果だと思っています。名付けて「戦略分類論」。今回はこの「戦略分類論」と、それに基づいてどのようなパーティを作ったかを紹介しようと思います。

※諸注意
・ ルールは「シングルバトル 6匹見せ合いから対戦させる3匹を選ぶ」というものを想定しています。
・ この文章を読むためには、以下のような知識を事前に知っていることが望ましいです。
−種族値、努力値とは何か
 −各種主要なポケモンの種族値が大体どのくらいか(特に「130組」と聞いて意味が分かるか)
 −各種主要な戦略(例えば「やどみが」と聞いて意味が分かるか)
 −役割理論
・ この理論は役割理論に反するものではありません。むしろパーティを構築するときに同時並行的に考えて貰えると幸いです。
・ この理論では「こうげき」と「とくこう」を「攻撃力」、「ぼうぎょ」と「とくぼう」を「防御力」とまとめて表記しています。この理論においては分ける必要がないからです。


戦略分類論

 役割理論においてはポケモンを「物理エース、特殊エース、物理受け、特殊受け、両刀、両受け、サポート」といった具合に分けますが、戦略分類論ではまず、戦略を「攻撃系、防御系、サポート系」の3つに分けます。
 実を言いますと、この理論はまだ完璧でありません。私が考察したのは主に「攻撃系」のみで、「防御系」に関しては一部しか考えがおよんでいませんし、しかも改善の余地が多くあります。また「サポート系」に関してはほとんど考察していません。
 それは私が想定していたルールが「シングルバトル 6匹見せ合いから対戦させる3匹を選ぶ」というものであり、最初の1体さえ倒せば3対2になりそれで十分有利だろうと考えていたからです。そして最初の1体目に防御系のポケモンが出てくることはあまりありません。1体目に防御系のポケモンを使って相手が自分の苦手なポケモンだった場合、自分が有利になるような控えポケモンに交代したいのですが、そのポケモンが攻撃系なポケモンになる場合が多く、攻撃系なポケモンは防御力が低いので、交代して1回攻撃を受けるのは非常にリスクの高い行為だからです。  また「サポート系」に関しては「『ちょうはつ』を使えばいいや」と安易に考えてしまったせいです。後にこれらに関して十分に考察していないことが仇になりました。

 ではまず「攻撃系」について更に分類しようと思います。

スカーフ型
 持ち物に「こだわりスカーフ」を採用する型。メタグロス以上の素早さ種族値があれば、最速130組(サンダースやクロバット)を抜くことができ、誰よりも早く相手を攻撃することができます。  代表的なポケモンは、メタグロス、ヘラクロス、ガブリアス、ムクホーク、バクフーン、ポリゴンZ。メタグロス以上の素早さ種族値を持ち、高い攻撃力と威力100以上の技を2つ以上持っていると採用されることが多いと感じています。
 素早い分、攻撃力を上げるアイテムや補助技を使うことができないので、爆発的な攻撃には繋がらないと考えられます。

多彩型
 色々なタイプの技を使って相手の弱点を攻めたり、「こうかはいまひとつ」があまり起こらないようにする型。代表的なポケモンは、ゴウカザル、ルカリオ、スターミー、フーディン。持ち物には「いのちのたま」や「たつじんのおび」、「きあいのタスキ」を採用することが多いです。相手の弱点を攻めきれないと攻撃力が微妙なポケモンがいたり、防御力が低いポケモンが多いように感じます。

一本技型
 「こだわりハチマキ」や「こだわりメガネ」、「かえんだま+こんじょう」で攻撃力を1.5倍にして戦う型。代表的なポケモンは、ヘラクロス、リングマ、ハリテヤマ、カイリキー、ポリゴンZ。素早さが遅い場合が多い。
補助技型
 1ターン目に「つるぎのまい」や「りゅうのまい」など補助技を使って攻撃力を上げる型。代表的なポケモンは、ガブリアス、ギャラドス。1ターン補助技を使うので、その1ターンが隙。逆にその1ターンを見逃してしまうと爆発的な攻撃力で全員やられてしまったりします。

 次に「防御系」を分類してみようと思います。

再生回復型
 「じこさいせい」「たまごうみ」「はねやすめ」「あさのひざし」等を使って1ターンで約最大HPの半分を回復させる型。どくどくに弱い。

ねむる回復型
 更に内部で「積み技+ねむる」と「ねむる+ねごと」に分類できますが、対策を考える点においては一緒の型にしてしまっていいと思います。真に有効な対策法は、私はまだよく分かりません。「ちょうはつ」はある程度有効ですけど、1回は積まれると思った方がいいと感じています。「ほえる・ふきとばし」は最後の1体だと効きませんし、一撃必殺も命中が不安です。「ほろびのうた」とかいいかもしれません。

回復しない型
 「いたみわけ」でごまかしたり、回復技を持たない防御系。こういうタイプもいないではない。

戦略分類論に基づいたパーティ構築

 私はこの「戦略分類論」を「各戦略に対して対抗策を考え、それに基づいてパーティを構築する」という方法で利用しました。前提としているルールが「6匹見せ合いから対戦させる3匹を選ぶ」というものでしたので、相手の6匹を見れば相手の目指している戦略が分かることが多かったからです。  戦略分類論、特に攻撃系に関する考察から選び出されたポケモンは「ムクホーク」でした。ムクホークはスカーフ型の中でも速い方であり、ムクホークを超えるスカーフ型は多分、バクフーンとガブリアスくらいしかいないのではないかと思います。「相手に必ず先攻がとれる」「この相手には先攻がとれないかもしれない」というのがハッキリしているというのは対戦時非常に作戦が練りやすかったです。相手がスカーフ型である場合が多いポケモンであれば、まず「とんぼがえり」でダメージを与えて逃げ、そしてみんなにダメージが蓄積した終盤では誰よりも速い素早さでとどめをさして行きました。
 多彩型に対しては、「きあいのタスキ」を採用していることが多く、それを先攻の「とんぼがえり」で失くすことができます。
 一本技型に対しては、「ひこう」と「かくとう」の威力120技を持っているというのが幸いしました。この型は「ひこう」や「かくとう」に弱点を持っているポケモンが多かったのです。  補助技型に対しては、大体が2撃で倒すことができ、補助技を使う1ターンと次のターンに先制をとっての一撃で何もさせずに倒すことが多かったです。竜舞を使うギャラドスは大体、竜舞を使った後最速130組を抜くように素早さを調整しているのですが、素早さに努力値252振ったスカーフムクホークは最速130組よりずっと速いので、超されることはほとんどありませんでした。

 お供に選んだのは「シャワーズ」と「ダクトリオ」。相手がスカーフ型や多彩型だった場合「とんぼがえり」をして即逃げるのですが、その後続として十分仕事をしてくれました。電気に対してはムクホークとシャワーズが弱いが、ダグトリオが強い。氷に対してはムクホークとダグトリオが弱いが、シャワーズが強い。草に対してはダグトリオとシャワーズが弱いけど、ムクホークが強い。というリスキーだけれど補完し合っている3体でした。

戦略分類論に基づいたパーティ

ムクホーク
いかく
いじっぱり
攻撃・素早に252
こだわりスカーフ
ブレイブバード
インファイト
とんぼがえり
すてみタックル
シャワーズ
ちょすい
ずぶとい
HP・防御に252
たべのこし
なみのり
ねがいごと
まもる
どくどく
ダグトリオ
ありじごく
いじっぱり
攻撃・素早に252
きあいのタスキ
じしん
ストーンエッジ
ふいうち
つじぎり
ウインディ
いかく
ひかえめ
特攻・HPに252
パワフルハーブ
かえんほうしゃ
ソーラービーム
しんそく
りゅうのはどう
ベトベトン
ねんちゃく
しんちょう
HP・特防に252
くろいヘドロ
どくづき
だいばくはつ
ほのおのパンチ
ちょうはつ
ムウマージ
ふゆう
ずぶとい
HP・防御に252
こうかくレンズ
シャドーボール
おにび
いたみわけ
ほろびのうた

 ムクホークの「すてみタックル」は電気ポケモン用。特に「サンダース」と「マルマイン」。両者とも1ターン与えると、「みがわり」や「あまごい」を使われるので交換しているひまはないです。
 シャワーズは「どくどく+たべのこし+ねがいごと+まもる」のシナジーがとても良かったです。また上記のように努力値を振っても「防御・特防・特攻」が同じくらいの値になり、意外とある「なみのり」の威力でエンペルトでさえ押し切れることがありました。
 ダグトリオの「つじぎり」は正直いりませんでした。補助技を使うエスパー・ゴースト用に持っていたのだが、正直じしんの方が威力が高いですし、浮いている相手に対しても「ストーンエッジ」であまりダメージが変わらなく、何で入れていたんでしょうかよく分かりません。カイリキー専用で「じわれ」を持っていた方が良かったかもしれません。HG・SSになって「きしかいせい」を遺伝で覚えるようになったそうなので、次はそれを採用したいと思います。  ウインディを入れたのは、炎技があるとないとで対戦時の「めんどくささ」が大きく変わるからです。また草技もあるとないとでは対戦時の「めんどくささ」が大きく変わります。両方をこなして尚且つ総合ステータスも高いウインディを採用しました。

 以前、防御系に関する考察をやっていなかった頃、よく負けた相手が防御系の「積み技+ねむる」のポケモンでした。防御系はほとんどシャワーズのどくどくで対抗していたので、「ねむる」で回復されるタイプだと全然勝てなかったのです。防御系の分析をしていなかったのが仇となりました。そこで入れたのが最後の2体。
 ベトベトンは、ルンパッパや「積み技+ねむる」ポケモン対策。ルンパッパ対策は「マルノーム」も候補に上がったのですが(「ヘドロえき」という特性をもっているので相手が「やどみが」でも大丈夫)、マルノームではルンパッパの攻撃を受けきれないかなと思い、特防特化のベトベトンの方にしました。当初は積み技を使う相手には「フォーカスレンズ+いやなおと」で対抗しようと思っていましたが、その間に受けるダメージとか命中の不安とかを考えると、「だいばくはつ」の方が潔くていいかなという結論に達しました。
 ムウマージも「積み技+ねむる」ポケモン対策。物理相手には「おにび」を、特殊相手には「ほろびのうた」をと思って両受けっぽくしましたが、正直「くろいまなざし」が欲しくなる場面が多々ありました。物理相手か特殊相手か、特化した方がいいかもしれません。
 弱点補強として入れた「ベトベトン」「ムウマージ」ですが、大会時には「積み技+ねむる」を使ってくる相手がほとんどいなかったので、あまり登場することはありませんでした…。

まとめ

 この「戦略分類論」はまだまだ未完成で、「防御系」各型に対しての考察もまだまだですし、「サポート系」に関しては分類すらまだされていません(型が多すぎてまとめきれないんです)。また金・銀のリメイクの登場で今までにない型や、「そのポケモンが、まさかあの戦略で来るなんて」という場面も出てくると思います。  私は金・銀のリメイクを持っていないので、またネットの情報を集めて戦略を分析する作業に戻ろうと思います。「防御系」や「サポート系」の分類をしっかりし、戦略分類論を完成させて、それがパーティ構築の新たな道標になるといいと思います。