「シャボン使いシュシュ」がどういったコンセプトで作られたか

プログラム担当 井上 尚亮

シュシュの始まり

 私にとっての今作品の始まりは、絵担当である小沢さんの相談からでした。小沢さんから「老若男女誰でも楽しめるゲームを作りたい。そのためにはどうすればいいか」と質問されたのです。小沢さんは調布祭のとき、親子連れの方がゲーム展示に来て下さり、子供の方は楽しんでいて親にも一緒にやろうと言うですが、親の方は「私はいいよ」とゲームをプレイしてくれない。そんな光景を見たそうです。子供がゲームを試遊しているときただ待っているのではなく、親世代でも手に取りたくなるようなゲームを作りたいということでした。
 私は2つのことを言いました。1つ目は「かわいいキャラクターがカッコイイことをすればいい」。これはカービィやヨッシーアイランドのことが念頭にありました。かわいいキャラクターで女性や母親世代にもとっつきやすく、しかしゲーム部分はしっかりとした内容で男性でも女性でも次第に引き込まれる。現行で老若男女が楽しんでいるゲームにはそんなイメージがありました。もう1つは「剣や銃は出さない」でした。剣や銃が出た時点で、親世代はそのゲームを子供にはやらせたくないのではないだろうか。そしてそう思ったゲームを自分から率先してはプレイしないのではないだろうかと考えました。
 それを伝えてから幾日か経った後、小沢さんは1つゲームのサンプルを作ってきました。それは泡をモチーフにしたキャラクターが口から泡を吹き、バイキン達をやっつけるゲームでした。そしてある提案をしてきました。「これを東京ゲームショウの日本ゲーム大賞アマチュア部門に出したい。でも他にもやらなきゃいけないことが沢山ありとても間に合わない。けれどもゲームの夢もとても諦められない。プログラムを担当してくれないか」ということでした。今だから言えますが、そのときは正直『どれか諦めろよ』と思いました。けれどもそのときの小沢さんはまさに必死で、断ったらどうにかなってしまうのではないかと思うほどでした。一瞬考え、覚悟して、私は承諾しました。それが5月14日金曜日。締め切りは6月末日でした。

シュシュのこだわり

 ゲーム大賞を目指すということで、もう1つ考えなければならないと思ったのが「新しいアクション」でした。カービィの吸い込み、ロックマンのボスを倒したらその武器が使えるシステム、ICOの手をつなぐ行為。いい作品には新しいアクションが付き物です。シュシュでも泡を使ったり、掃除をテーマにした新しいアクションを色々考えました。しかし2人の納得するようなものはいくら時間をかけても出てきませんでした。そこでいっそのこと新しいアクションを捨てました。その代わり、小沢さんには素晴らしい絵があるのでそれを生かしたエフェクトや、敵やステージギミックに力を入れることにしました。
 今回このゲームを作ったことで2人とも大変ためになったのは、スケジュール管理の方法でした。1週間単位でその週の目標を決め、また90分を1工程としてその日には何工程分取れる時間があるか洗い出し、同時にやるべき作業も洗い出しそれらが何工程分あればできるかも決め、その週のスケジュールに当てはめました。そしてなるべく直接会い、会えない日でもメールやチャットを用いて必ず毎日進捗状況を報告しあいました。個人的な感想ですが、小沢さんのアメとムチの使い分けは上手かったように思います。最初、何工程分時間が空いているか提示したとき、少しは手加減してくれるかな? 予備日とか作ってくれるかな? と思いましたが、怒涛のように隙間なく予定を詰め込まれました。しかし小沢さんの方がもっと忙しく(何か5つくらいの物事を同時進行でやっていた)、元々小沢さんが自身に厳しい人だったので「OK! 全然大丈夫!」と快くその予定表を承諾しました。今だから言えますが内心『もうそれ以上はやめてくれえぇ』とか思いながら埋まっていく予定表を眺めていたのを覚えています。制作時も『この工程が締め切りまでに完成しなければ、友情にヒビが…』と、いい緊張感を持って作れたと思います。これではムチだけなのですが、小沢さんは本当に感動屋なのです。進捗状況を見せると凄く感動し、褒めます。もういいところしか見えてないのではと思うくらい。私はこのサークルに入ってから5年間ミニゲーム以外でゲームを完成させたことがなかったのですが、これらがあったから初めてゲームを完成させることができたのだと思います。  ステージ作りには1番時間がかかりました。制作時間の都合上「ステージ数は10個、スクロールはしない」と決め、また最初に各ステージのテーマを決めました。更にこのゲームには実は2つのゴールがあります。1つは通常のゴール、もう1つは敵の全滅です。通常のゴールだけだったらある程度の難易度、けれども敵を全滅させようと思ったらもう少し難易度が上がる、と難易度を分けるためにそうしました。スクロールをしないと決めたので、ステージの大きさをブロックに換算すると横20×縦13。その限られたスペースでステージテーマを実現し、2つのゴールを設け、更にはプレイヤーがちゃんとギミックを学んでいけるようにするというのは本当に骨が折れました。けれどもそういった制限があったおかげで練り込まれた、1ブロックの無駄もないステージが作れたと思います。  シュシュのテーマの1つは「かわいいキャラクターがカッコイイことをする」でした。なので「かわいいキャラクターとは何か」と2人で絵を描き合ったのを覚えています。結論としては「かわいいは表情ではない。形状だ」ということでした。表情を色々変えてみたところでかわいらしさに劇的な変化はなく、形状を変化させた方がかわいらしさが大きく変化するように感じました。しかし表情も大事なのではないかと今では少し思います。実はサークルメンバーにはシュシュの旧デザインの方が好きという人もいました。多分、旧デザインのシュシュは笑っているからだと思います。実際のシュシュは通常時は無表情です。けどだからこそ、ジャンプ時や風に乗ったときのシュシュは楽しそうでかわいいのではないでしょうか(カービィも通常時ポカーンとしていますし。それに笑いながら敵を倒していく主人公なんて何か嫌だ)。


 制作終盤戦、タイトル決めがありました(ずっとタイトル未定だったのです)。既存のゲームタイトルを研究した結果「名詞型」「名詞&動詞型」「響きがカッコイイ型」に分けられるのではないかと思いました。名詞型の例は「ロックマン」や「ポケットモンスター」で、これらはキャラクターを前面に押し出しています。名詞&動詞型の例はサークルの先輩方の作品で「BLOCKSUM」(→ブロックをSUMする)や「ミサイルディフェンス」(→ミサイルでディフェンスする)で、ゲーム内容が分かりやすいです。「響きがカッコイイ型」については割愛します。これらを元に私が最初に提案したタイトルは「ばいきんスイーパー シュシュ」でした。ばいきんを倒すゲームであったことと、あんまり聞きなれない言葉がいいなと思い、ばいきんスイーパーだったのですが、「ばいきんって言葉をタイトルに入れたくない」と小沢さんに反対されました。次に出てきたのが「シャボン使い シュシュ」でした。「シャボン使い」というのがあまり聞きなれない言葉の組み合わせで、何か魔法使いっぽいのがいいと思っています。「シュシュ」はウォッシュの「シュ」から来ています。

シュシュから学んだこと

 サークルメンバーには大変お世話になりました。制作チームに音を担当する人がいなかったのでフリー素材を使おうと思ったのですが2人とも音に関する知識がなく、ループの仕方やoggへの変換をして頂いたきました。またゲーム大賞に応募するにはプレイ動画が必要だったのですが、その録画もして頂きました。デバッガーの重要性も知りました。終盤戦になると自分自身はもうテストプレーをやりすぎていて、このゲームが楽しいかどうかの感覚がマヒしてくるのです。闇雲の中で模索している気持ちのとき、テストプレーをして下さった方々の意見が唯一の道しるべでした。手伝って下さった宮岡さんや、海川さん、もっちーさん、その他テストプレーをして下さった皆々様には重ねて感謝申し上げます。みんながいなければ、このゲームは完成していませんでした。  今回、演出に力を入れるということで、アニメーションを多用しました。私は元々アニメーションに関して苦手意識を持っていまして、アニメーションを管理する変数やアニメーションの生成・消滅などどうすればいいか毎回悩んでいたのですが、沢山数を重ねていく内に形式的に作れるようになりました。今回作った反省点としてアニメーションの制作方法が、小沢さんがHSPで原案を作りそれを私がC++で再現するという2度手間な方法をとっていたのですが、今なら絵担当の人がアニメーションを作ってそれをそのままゲーム内に取り込める、そんなソフトを作れるかもしれません。  私は今までミニゲーム以外でゲームを完成させたことはありませんでした。今回、今までいくつも作品を完成させている小沢さんと一緒に制作できたことによって、スケジュール管理への真剣さを知りました。また今まででもミニゲームを作ったり、人のゲーム制作を手伝ったり、プログラミングの講師をしたりで、ゲームの色々な部分に思うところはあったのですが、今回完成したことによってそれぞれの関係性やバランスについて知ることができたと思います。今回、個人的な裏テーマとして「全部Yesと言う」というのを設定していました。デバッガーの有用性は上であげた通りですが、それだけでなく、各個人個人は色々な感性やこだわりを持って、中には自分には全然分からない感覚を提唱してきた方もいました。そんなデバッガーの方々の意見や小沢さんの「こういうことってできる?」というものはなるべく全部取り込んだつもりです。色んな人の色んな感性やこだわりに触れることができたのは、私にとっていい財産になったと思います。