3/4拍子と6/8拍子の違い
文責: 渋川 誠

このページでは、音楽に関する豆知識を紹介したいと思います。音楽に疎いという方も、あまり難しく考えずに気楽に読んでください。

・3/4拍子と6/8拍子

3/4拍子の曲は、1小節の長さは4分音符3つ分です。そして6/8拍子の曲は、1小節の長さは8分音符6つ分です。8分音符の長さは4分音符の長さの半分ですから、音符による1小節の長さは、3/4拍子も6/8拍子も同じということになります。
そもそも、単純に分数として考えれば、3/4と6/8は同じ数です。3/4の分子と分母にそれぞれ2をかければ6/8になるのですから。6/8拍子は単に3/4拍子の拍の単位を細かくしただけとも考えられます。
こう考えると、この二つは区別の必要がないように思われます。しかし、現実には3/4拍子と6/8拍子の2種類が存在します。必要がないものをなぜわざわざ区別しているのでしょうか。それは、この二つがやはり区別すべきものだからなのです。

・拍と拍子

この区別について話す前に、「拍」と「拍子」とは何なのかを説明しましょう。
まず「拍」ですが、これは曲を一定のリズムで刻む基本単位のことを指します。

<拍>
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

そして、この拍に一定の周期で「強拍」と「弱拍」の違いが生じたものが「拍子」です。


<拍子>
● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○
(●は強拍、○は弱拍)

上の拍子は3拍に1回の周期で強拍が出てきます。これを「3拍子」といいます。これが2拍に1回なら「2拍子」、4拍に1回なら「4拍子」となります。また、強拍から始まって次の強拍までの1サイクルを「小節」といいます。

<小節>
|● ○ ○|● ○ ○|● ○ ○|● ○ ○|
(縦線と縦線の間が1小節)

さらに、1拍の単位となる音符の種類を決定します。例えば4分音符を選んだとしましょう。この場合、分数を使って「3/4拍子」と表記します。
つまり、m/n拍子とは「n分音符を1拍の単位としたm拍子」ということなのです。「1小節の長さがn分音符m個分である」というのはその結果であり、拍子の定義とは違うことに注意してください。

・拍数が違う

ではこれを踏まえて、3/4拍子と6/8拍子を比べてみましょう。
3/4拍子は、「4分音符を1拍の単位とした3拍子」ということになります。それに対し、6/8拍子は「8分音符を1拍の単位とした6拍子」ということになります。これらを図示してみますと、

<1小節の比較>
|●   ○   ○  | 3/4拍子
|■ □ □ □ □ □| 6/8拍子
(●○は4分音符、■□は8分音符)

というようになります。確かに音符による1小節の長さは同じです。しかし、3拍子と6拍子ですから、1小節の拍の数が違います。「単に拍の単位を細かくしただけ」ではなく、それによって拍数が変わるのであればそれは大きな違いなのです。

・単純拍子と複合拍子

更に言えば、6/8拍子は3/4拍子を細かくしたものではありません。これを説明するもっと大きな違いが、この二つが「単純拍子」と「複合拍子」に分類されるということです。
「単純拍子」とは拍数が少ない拍子のことで、2拍子、3拍子、4拍子がこのグループに入ります。この三つが拍子の基本というわけです。
それに対し、「複合拍子」は単純拍子の発展型です。複合拍子は、単純拍子のそれぞれの1拍が3分割された拍で構成される拍子のことです。つまり、単純拍子の拍数にそれぞれ3を掛けた、6拍子、9拍子、12拍子がこのグループに分類されます。そして、これらはこの順に2拍子系、3拍子系、4拍子系という系統に当たります。

<例:6拍子のできかた>
|●     ○    | 2拍子
 ↓3分割  ↓3分割
|● 〇 〇 ○ 〇 〇| 6拍子
             (2拍子系)

さて、3/4拍子と6/8拍子をこの分類に当てはめてみるとどうでしょう。3/4拍子は「単純拍子、3拍子系」になり、6/8拍子は「複合拍子、2拍子系」になります。このように、6/8拍子は「3/4拍子の1拍を2分割したもの」ではなく、「2拍子の1拍を3分割して、1拍の単位を8分音符にしたもの」なのです。

拍子分類一覧表
2拍子系3拍子系4拍子系
単純拍子2拍子3拍子4拍子
複合拍子6拍子9拍子12拍子

・その他の拍子

これまで紹介してきた拍子は、まだ基礎的なものです。他にも、5拍子や7拍子などのように、異なる拍子を混合して作られた「混合拍子」や、一定の小節ごとに拍子が変化していく「変拍子」などがあります。
また、これまではさんざん比較してきた3/4拍子と6/8拍子ですが、「音符による1小節の長さが同じ」であることを逆に利用し、3/4拍子の旋律と6/8拍子の旋律を同時に鳴らして複雑なリズムを作り出すという高度な技法もあります(これを「ポリリズム」といいます)。

・終わりに

拍子の概念や3/4拍子と6/8拍子の違いについて、大体おわかりいただけましたでしょうか?曲を聴くとき、それが何拍子であるかをちょっと意識しながら聴いてみてください。何気なく聴いていた曲の新しい一面を発見することができるかもしれません。

参考文献:
「楽典」 西岡 龍彦 著
     アカデミアミュージック発行