初めまして。我がサークルの数少ない音楽屋の一人、cobaltです。今までウチの会誌で専門的 なお話として無かった、「音楽に関する話」をここでやってみようと思います。だんだんサークルも多角 化してきたのですねぇ。で、何をしようかということで、タイトルの通りコードについての話を中心に 進めたいと思います。内容は初心者向けですので、専門的過ぎてわからねぇ〜、といったことは多分な いと思います。音楽に触れようとする方の中には、「コードが分からないから」と臆してすぐに諦めてし まう方が結構いらっしゃるものですから、そういう方は必見(?)です。
さて、私cobaltはこのサークルで音楽屋として活動しておりますが、活動内容はその名の通り 音楽をつくるわけですね。最近のゲームでは、プログラムの如何だけでなく、ストーリーや絵、BGM も大きな評価対象の一つになってます。そして各分野とも平均的なレベルがどんどん高くなってまいり ました。一人で全部出来る人はそういるものではありません。ですから各分野の技術者達が集まって一 つの作品を組み上げていくわけですね。まぁ、その規模は様々ではありますが。
それでは、コードの話に移ろうかと思います。ここでお話するのは、コードに関する基本中の基本で、 これを知ったからと言って、「今日から僕も音楽作れるぜ!」なんてことはありませんのでご注意くださ い。また後で書こうかと思っていますが、音楽を作るのとコードを知ることは、またちょっと 別の事 なんですね。
ではコードの話の本題へ。先ず上の図を御覧下さい。見ての通り楽譜です。ドの音からシの音まで計 12の音を音符で示してあります。小学校の音楽の授業を受けた人なら、音階は分かるでしょう。分か る人にしか分からないのが、上下のアルファベット等で表された文字だと思います。先ず、譜面の上に あるのは音階の別名とでも思って下さい。ドはC(ツェー)、レはD(デー)、ミはE(エー)、ファはF (エフ)、ソはG(ゲー)、ラはA(アー)、シはB(ベー)といった具合です。ピアノで言う黒鍵を叩く 音は、そのまま♭(フラット)や♯(シャープ)をつければいいのです。そして譜面の下にある表記で すが、これはC(ド)の音をルート音、つまり基本の音とした場合の、他の音の呼び名の一つです。C (ド)を1番目とすれば、D(レ)は2番目、E(ミ)は3番目と数えるだけですね。二段目にあるの は1オクターブ上の音を表しています。例えば、上記の数え方をすれば、C(ド)が1番目でB(シ) は7番目、一つ上のオクターブにあるC(ド)は今度は8番目、その上にあるD(レ)は9番目、とな るわけです。この呼び方は、コード作成の説明をする上で、やりやすいように呼んでいるものと考えて ください。ですから、気付いた方もいらっしゃると思いますがB♭とBの音だけちょっと違うのです。 B(シ)は確かに7番目ですが、その呼び方はB♭(シ♭)が7thで、B(シ)がM7th(メジャ ーセブンス)と呼ばれます。そして忘れてならないのは、これらの呼び方は、あくまでC(ド)を基準 とした場合に限ってのものです。もしD(レ)を基準にすれば、D(レ)がルート音、E(ミ)が2n d、C(ド)は7th(D♭がM7th)となるのです。ここではC(ド)を基準にした場合だけ説明 します。
さて、事前準備はここまで。ここから具体的にコードの話に移ります。もうC(ド)といった括弧付 きも終わりですよ。ではまず、コードとはなんぞやという話から。コードというのは、簡単に言って和 音のことだと思ってください。音楽、つまり曲というのは、だいたいがハッキリしたメロディを持って いますよね。メロディの無い曲というのは、コードが無い曲であるか、コードだけで演奏される曲ぐら いなものです。メロディのある曲、例えば歌謡曲やゲームミュージックなんかを思い出してください。 曲を聴くと、メロディだけでなくバックの演奏で和音らしきものを奏でていたり、低い音でベース音を とっていたりしますよね。このバックで流れる和音やベース音は、どんな音でも自由に使えるわけでは ないのです。メロディや曲に合った音というのが必ずあります。「合った」というのはあくまで一般的な 人間の音の感じ方に依存するわけですが。そして、この「曲に合った和音」というのがズバリコードな のですよ。コードは曲の流れに応じて刻々と変化します。例えばCの次はG、Am、C等というように です。そしてまた、ベース音というのも、基本的にはそのコードのルート音を使うのが楽です。コード がCならベース音はド、といった風ですね。つまりベースラインもコードによって決まってくるのです ね。さて、コードというものが一体何なのか分からなかった方、なんとなくは分かっていただけたでし ょうか?
では、コードとは如何にして形を成すかについてお話しましょう。コードというものは、実に沢山の 種類がありまして、全部暗記するぐらいなら今日のご飯の米粒を数えている方が有意義、ってなもんで す。私が始めて「コード」なるものに出会ったとき、「コード覚えれば?」と勧められたのですが、楽器 店でコードブックを立ち読みして愕然としました。「こ、これ全部覚えんの?んなアホな!」。今なら分 かりますが、「コードを覚える」というのは、全てのコードを暗記することではなく、基本的なコードと、 色んなコードの形成方法を学ぶことだったのではないでしょうか。
二つ目の譜面には、最も基本的と思われるコード「C(シー)」と、その変化したコードの幾つかが示して あります。和音そのものは、ピアノなどの鍵盤楽器で弾くものです。ギターなど他の楽器になると表し 方が変わってきます。まぁ、鍵盤なら大抵の人に馴染みのあるものだと思います。音楽室のオルガンく らい触ったことがあるでしょう。先ず、コードのCは「ド」と「ミ」と「ソ」の和音であることを知っ て下さい。では、これはどのように形を成しているのでしょう?C(シー)とは、実はCM(シー・メ ジャー)の意味です。しかし「メジャー」の部分は普通省きます。コードCを作るとき、先ずは先程お 話ししたルート音のCを置きます。そして二つ目の音を決定します。メジャーコードと呼ばれるコード の場合、二つ目の音はCの次の音「D♭」から数えて4つ目です。一番上で、鍵盤の絵が表示でき るので、それを参考にして下さい。ではD♭から4つ数えましょう。ということはD♭・D・E♭・E ですね。二つ目の音はE、つまりミの音に決まりました。これを先の譜面で説明した呼び名に当てはめ ると、「3rd」サード音ということになります。そして三つ目の音は、サード音の次の音から数えて3 つ目です。では数えてみましょう。F・F♯・Gですね。三つ目の音はG、つまりソの音に決まりまし た。そして同じくGの音は、Cがルート音の場合には「5th」フィフス音と呼べます。メジャーコー ドはこのようにして形作ることができます。「ルート音」と「3rd」、そして「5th」の三和音がメ ジャーコードです。もちろんこれは、他のメジャーコードにも適応できるのですよ。D(ディー)なら ルート音のD、サード音のF♯、フィフス音のA、の三和音です。これでメジャーコードの作り方はお しまいです。簡単でしょう?
次に、二つ目の図の左から二つ目、三つ目の和音を見て下さい。実はこの二つもコードCなのです。最初 のド、ミ、ソの和音と同じです。後の二つの和音も間違いなくドとミとソを押さえています。順番が違 うだけです。このように、コードというのは演奏時に、その並び方を変えてアレンジすることもできま す。そのコードが含む音を押さえていれば、順番はどうあれ同じコードなのです。
では、図の左から四つ目の和音を見て下さい。このコードはCm(シー・マイナー)と呼ばれ、これ も基本的なコードの一つです。メジャーコードが明るい響きをしているのに対し、マイナーコードは暗 い響きを醸し出します。メジャーコードとマイナーコードはコード全体の基本とも言えます。では、マ イナーコードの作り方をお教えしましょう。マイナーコードは、メジャーコードのサード音を半音下げ たものです。以上。本当にこれだけなんです。例えば、Cのサード音であるEの音を半音下げてE♭に してみましょう。ド、ミ♭、ソの和音になり、これがCmと呼ばれるコードなのです。このメジャーコ ードとマイナーコードを元に、色々な種類のコードが作れるわけです。
ということで、他にどのようなコードがあるのか、その幾つかを取り上げて紹介していくこととしま しょう。先に挙げたの図の右から4番目の和音を見て下さい。これはC7(シー・セブンス)と呼ばれ るもので、四和音コードの中でもよく使われるコードでしょう。このコードは、メジャーコードのフィ フス音の次の音から数えて3番目の音を付け足したものです。例えば、Cのフィフス音であるGの次か ら3つ数えると、G♯・A・B♭となり、コードCにB♭を付け足したものがC7になるのです。次に、 フィフス音の次から4番目の音を付け足してみましょう。Gの次から数えて4番目の音はBです。これ をコードCに付け足すと、CM7(シー・メジャーセブンス)というコードになります。セブンスコー ドに付いてくる「メジャー」という言葉。これはメジャーコードとマイナーコードの作り方からその違 いを覚えることができます。CとCmのサード音に注目してみて下さい。Cのサード音はE、先に述べ た通りルート音の次から数えて4番目の音です。そしてCmのサード音はE♭。これは、Cのサード音 であるEを半音下げたものだと説明しましたが、実はルート音の次から数えて3番目の音でもあります。 お分かりになりましたか?実際に音楽分野の学問でどう定義されているのかは知りませんが、「4つ数え るのはメジャー系」、「3つ数えるのはマイナー系」という法則みたいなものが伺えます。と、回りくど い説明があるのですが、実のところは、一番最初の譜面を見ていただければもっと簡単なのですね。C 7ならCにセブンス音を付け足せばよいのです。CM7ならCにメジャーセブンス音を付け足すわけで す。上記の「法則みたいなもの」というのは、コードを覚える上で覚えやすくするための道具とでも思 って下されば結構です。
次は二つ目の図の右から2番目の和音です。これはC6(シー・シックス)というコードで、これま での説明から想像に容易いと思われますが、シックス音をメジャーコードに付け足したものです。同じ ように一番右の和音では、ナインス音をメジャーコードに付け足し、Cadd9(シー・アドナインス) というコードになります。何故呼び名が変則的に変わるのかは、私も知りません。
さて、ここまでメジャーコードのセブンスやシックス、ナインスコードを紹介しましたが、マイナー コードについても紹介しましょう。と言っても、メジャーコードの場合と全く同じで、Cmにセブンス 音を付け足せばCm7(シー・マイナーセブンス)、メジャーセブンス音を付け足せばCmM7(シー・ マイナーメジャーセブンス)、シックス音ならCm6(シー・マイナーシックス)というわけです。しか し残念ながら、全てがメジャーコードとマイナーコード間で対応しているわけでなく、Cmadd9な どというコードは知りません。そういった細かい部分は例外として学ぶ他ないと思われます。
そして最後に、図で残っている和音がありますね。右から5番目のコードです。これはCsus4 (シー・サスフォー)と呼ばれ、ちょっと例外的なコードです。メジャーコード、マイナーコード の区別に全く介入しないコードの一つです。形成の仕方は、メジャーコードのサード音を半音上げると いったものです。Cの場合なら、サード音であるEを半音上げてFにすれば、ド、ファ、ソの和音とな り、Csus4になります。「例外だ」などと言うと、ちょっと変なコードに思えますが、個人的にサス フォーの響きは好きです。
私が紹介できるコードはこれくらいです。どうでしょう?コードの基礎知識は分かって頂けたでしょ うか?ここで紹介した他にも沢山のコードがあります。しかし、その全てはそれぞれの形成方法によっ て呼び名が違っているだけです。コードを覚えること自体は大したことではないのです。それに実のと ころ、作曲するにあたってコードを覚える必要性はあまりありません。この程度の基礎知識を持ってい れば、あとはコードブックでも買えば問題ないでしょう。実際、私がコードブック無しでまともに扱え るコードなんて、ここで紹介したコードだけです。あとは滅多に使いませんし、知りたければコードブ ックを見ればよいのです。また、ここでは鍵盤楽器でのコードについてお話しましたが、ギターなどの 楽器になると、コードの紙面上での表記方法は変わってきます。ギターならコードダイヤグラムという ものがあるのです。これも本で市販されていますので、それを見ればいいのです。「コードって難しそう」 と思っていらっしゃった方が、これで「コードなんて大したもんじゃないな」と思って頂ければ幸いで す。コードというのは、曲に合った和音を整理整頓して呼び名を与えてやったものだと、それだけのも のなんだと思います。
では最後に、冒頭で仄めかしたお話に移りましょうか。「コードを知ってもいきなり作曲ができるわけ ではない」という問題発言っぽいアレです。しかし、これは事実です。今まで音楽は聴くこと専門だっ たのに、これを読んで思い通りに作曲できそうになっちゃった方はいらっしゃいますでしょうか?いた らびっくりします。と、つまりはそういうことなんです。私も初めてコードなるものを知ったとき、「こ れを勉強すれば曲が作れるんや」などと思ってみたりしたものでした。残念ながらそういうわけではな いようです。ですが、「コードを知っても作曲できるようになるわけではない」、これを言い換えれば「コ ードなんて知らなくても作曲はできる」ということでもあるのです。少々互換に無理がある気はします が、私はそう思います。音階を奏でる道具があれば、自分の想いを曲に表現することは可能です。作曲 という言葉の程度は人それぞれだと思いますが、出任せの鼻歌を歌っても、それはそれで一つの曲なの ではないでしょうか?
初心者が触れる作曲とはどんなものなのでしょう。例えば私や私の友人が初めて作曲したときの曲が どんなものだったかお教えしましょうか。私達はパソコンを使ってMIDIファイルを作ったのです。 初めて作った曲ですし、シーケンスソフトの勝手もよく分からないし、ということでそれはそれはお粗 末な曲だったと思います。しかし、それは曲としての完成度の問題で、旋律や音使いそのものはあまり 文句をつけられるようなものではありませんでした。つまり、副旋律やドラム、伴奏のつけ方を、知識 や技術として学べば、十分に聴ける曲だったのです。きっと誰でもそうなんだと思います。私達だって 特別音楽に精通していたわけではありません。しかし、頭の中にはどんな名曲にも負けない素晴らしい 曲が流れているはずです。それを実際に形にできるかどうか、作曲の核心はここだと思います。まぁ、 世間に過大評価を受けるような作曲家達は、一般人にはない個性的な音楽的素質でも持っているのかも しれません。これはこれで事実だと思いますが。それはさておいて、つまりは作曲なんて誰でもできる ものだと言いたいのですよ。「コードを知っても作曲ができるわけではない」と述べたのは、コードがそ れ程作曲能力そのものに介入しないものだと言いたかったのです。上手な曲を作るには、もっと他の知 識・技術を身に付ける必要があるのです。その知識や技術とは、シーケンスソフトの使い方であったり、 楽譜の書き方であったり、普通に勉強すれば誰だって習得できるものです。良く、シーケンスソフトの 売り文句に「今日からできる!」なんて無茶とも思えることが書いてありますが、あながち嘘でもない と思いますよ。あとは、作りたいジャンルの曲を聴きまくってその曲構成を学ぶ、といったところでし ょうか。良い曲を作るには、聴くことがかなりのウェイトを占めてたりするんですよね。
では、この辺で失礼させて頂きます。最後までお付き合い頂きどうも有難う御座いました。