自作派上級者向まったり改造講座

まろやかサウンドカード

written by masa-u (4JS) <masa-u@highway.ne.jp>

※画像はクリックすると拡大表示できます。

1 良い音出してますか?


パソコンから音を出すのに必要なサウンドカード 1。 サウンドカードを搭載していないパソコン、というのもあまり見ませんし、 「カード」という形でなくても、マザーボードに搭載されていたりもします。 ありふれたパーツです。

しかしながら、その「音質」という面からみるとどうでしょうか。 あまり気にされてない感じがします。 事実、同じ音でもCDに焼いてCDプレイヤーで聞いた方が良い、という場合が多いです。

せっかくですからPCから直接良い音を出したいですね。 でも「音の良い」サウンドカードは高価で、なかなか手を出し辛いものです。 そこで、普通のサウンドカードに改造を施して、 少しでも良い音が出るようにしてみましょう。


2 音響機器なんだから


当り前の話ですが、サウンドカードは音響機器です。

音響機器では、少しのノイズや、小さな構造上の欠陥であっても、 音質に大きく影響してしまいます。 そのため、いろいろな対策を施して製品をつくります。 それで、「音の良い」製品は、サウンドカードに限らず高価になるわけです。

音質対策の方法はいろいろあるのですが、サウンドカードで施されていそうな 具体的な方法には、以下のようなものが考えられます。

1. 配線の工夫
電源配線を太くして安定度を高めたり、信号線の引き方を工夫して クロストーク 2 などを減らしたりします。

2. 電源の安定化
電源をカード上で再度安定化して、他の機器からのノイズを防ぎます。

3. 部品の選択
周波数特性や、ノイズ特性に優れた部品を使い、音質向上を狙います。

このうち、1については、プリント基板になってしまってはもはや どうしようもありませんね。 また、2についても、付加しなければならない部品が多かったり、 どうにもいじりにくい配線パターンになっていたりすると、 どうにもなりません。

そこで注目するのが3です。

サウンドカードを見ればわかるとおり、そこそこサイズが大きくて交換できそう な部品もけっこう載っていますし、しかも、 ものによってはあまり良さそうな部品は載っていなかったりもします。

そいつらを交換してやれば、音質の向上が見込めそうですね。


3 ターゲットを絞れ


さてそれではどの部品を取り換えてやれば良いでしょう。

サウンドカードの部品には小さなチップ部品が採用されているところが多く、 そいつらはなかなか交換できそうにありません。 ICなどもカスタムチップだと同等品はまず手に入りません。 が、そんな中でサイズも大きく容易に交換できそうなのが、 コンデンサです (左図)。

実はコンデンサは「音質を左右することの多い部品」と言われ、 「音響用コンデンサ」というのも開発され市販されていたりもします。 実に具合が良いですね。こいつらを交換してしまいましょう。

ここで、左上の図をよく見てみると、 上段のコンデンサは下段のコンデンサに比べなんだかリッチな感じがしますね。 実はこの上段のコンデンサが「音響用コンデンサ」で、 下段のものが「汎用品」なのです。

おそらくほとんどのサウンドカードには下段の「汎用コンデンサ」が載っている でしょう。それをオーディオ用に交換してしまおう、という寸法です。


4 念には念を。改造準備


計画が決まったら、まずは改造を施すサウンドカードを用意しましょう。 改造するのですから、壊れてもメーカ保証や修理はききません。 全て自己責任です。 それを念頭に入れてカードを選びましょう。

私はジャンク屋で安く手に入れた「SoundBlaster16 PnP」 を使うことにしました。

サウンドカードが用意できたら、交換するコンデンサ全ての位置、 向きと容量をメモします。どのようなコンデンサを用意するのか、 また、どこにどれがどっちを向いてついていたのか、など、 改造する上で必要な情報になるので、 きちんとメモをとりましょう。

左の図のような感じで良いと思います。 ダブルチェックして間違いが無いことを確認するのを忘れずに。


5 魅惑のカラフルコンデンサ


サウンドカードに載っているコンデンサの種類と数がわかったら、 いざかわりのコンデンサを手に入れましょう。

とりあえず秋葉原に行けば音響用コンデンサはいろいろなところで 手に入りますが、最近は通販でも買えるかもしれません。

音響用コンデンサはどういうわけかどれもこれも妖しげにカラフルな 外装をしています。 先ほどの青紫のコンデンサはSANYOのOS-CON3 ですが、他にも緑だったりオレンジだったり赤紫だったり、 とにかく汎用のコンデンサ4 には見られない色が多くあります。

まぁそれは置いておいて、好きなコンデンサを選べば良いでしょう。 ただし、物によってはサイズが巨大で、 サウンドカードに乗り切らなくなるようなものがあるので、 そのへんは考慮しましょう。 私は安価でなかなか良い音5 の出るnichiconのMUSEを選びました。 緑色のやつです。


6 Remove 'em All


部品が揃ったら今サウンドカードにくっついているコンデンサを外します。 はんだごてや吸い取り器、吸い取り線などを活用します。 この作業はていねいに行いましょう。

サウンドカードは通常多層基板なので、 部品取付穴はスルーホールであることが多いです。 スルーホールははんだが残りやすいのですが、 無理に取ろうとするとスルーホールをぶち抜いてしまいます。 スルーホールを抜いてしまったら回路はもちろん壊れてしまうので、 即ち故障ということになってしまいます。 こうなっては元も子もありません。注意しましょう。

スルーホールにはんだが残ってしまうときは、 片側からはんだごてではんだを暖め、 反対側から吸い取り器で吸い取ると意外とうまく除去できます。

また、ベタアースになっているところでは熱が逃げやすいので、 少々強めのはんだごて6があると やりやすいかもしれません。

下の図がコンデンサを除去しおわったサウンドカードの写真です。



7 いざ取付


除去が終ったら新コンデンサの取り付けです。

さきほど取ったメモを参照して、間違えないよう確実にはんだ付けします。 除去より簡単にできるはずなので、 取り付け位置と向きさえ間違えなければ大丈夫でしょう。

全部取り付けができたら完成です。 取付後の写真を下に掲載します。



8 聴いてみよう


交換が終ったら念のためもう一度コンデンサの位置と向きをチェックして、 問題ないようであれば、早速PCに取り付けて音を出してみましょう。

私のSB16では意外に効果があり、音の曇りが取れたような感じになりました。 すっきりした感じです。 特にOPLの音が以前にましてまろやかになりました。 まず成功といえます。

今回はとりあえず改造してしまったので、 改造前後での絶対的な比較ができませんでしたが、 改造前の音を録音しておいてそれと聞き比べてみると、 どのように変わったかがはっきりわかって面白いと思います。


9 おわりに


音の好みは人それぞれですし、 元から載っているコンデンサの性能や、交換後のコンデンサの性能によっても 結果の感じは変わってきますので、必ずしも音が良くなる保証はありません。 また、繰り返しになりますが、

改造なので壊れても保証はききません。

以上のことに納得できるのであれば、 この改造は低価格でそこそこ効果のあげられる面白い改造です。 腕に自信のある方はお試しあれ。




1. PCIやISAに挿す「拡張カード」の方。 PCカードではないので悪しからず。
2. 「混線」のこと。 信号線の近くを通る他の信号を誘導で拾ってしまい、 混ざってしまうこと。
3. 有機固体電解コンデンサ。 高価ですが非常にはっきりした音が出ます。 特に高音域の特性が良くなります。 場合によっては良くなりすぎてうるさいかも…
4. 大抵黒か青
5. 自作アンプで使用したところ良好だった、という意。 低音から高音まで無理なく出る感じです。
6. 30Wくらいの