ゾンビゲーあれこれ

3C みすてぃ

 

 

ホラー作品の名脇役であるゾンビ。世間的には目立たない存在ですが、彼ら無くしてホラーは語れません。

今日はこのゾンビについて、私の主観と偏見を交えてお話しようと思います。

 

『そもそもゾンビとは』

ゾンビとは一般に蘇った死体のことを指します。

ブードゥー教では呪術や秘薬を用い死人を意のままに操ることができるとされています。この蘇らせた死体をゾンビと呼んでいるのです。(一説には、死人ではなく単に薬品によって曖昧な状態にされ生きている人間らしいですが。)

しかし、本来のゾンビは労働力として畑仕事に使われたりするものだそうです。何しろ疲れない、文句言わない、給料いらない、と雇い主にとっては完璧な労働力ですからね。ある意味ゾンビを最も有効利用した形です。

まぁそういう訳で、元々のゾンビは人を襲うようなことはしないのです。昨今におけるこのようなイメージは、20世紀に入って様々なSF、ホラーフィクションによって形作られたものなのです。

図1:歩くゾンビ

 

『第一のエポックメーカー』

1968年、ある画期的なホラー映画が世に出されました。ジョージ・A・ロメロ監督による『Night of The Living Dead』。これこそが現代におけるゾンビ像を確立させた映画であり、以降のゾンビ作品はほぼ全てこの映画の影響を受けているといっても過言ではありません。

それ以前にもゾンビを題材にした映画は存在したのですが、現代我々がゾンビに持つイメージを人々に固定化したのは間違いなくこの作品です。現にこれ以降、雨後の筍のごとく数多くのゾンビ映画が登場したのですが、どの作品についても、作品によって多少なり設定や世界観は違えども、ゾンビのイメージはつい最近まで『Night of The Living Dead』とほとんど変化がありませんでした。その後、20世紀の終わりに登場したあるものによりゾンビ業界に革命が起こったのですが、その話はまた後で。

 

 

『ゾンビの種類』

さて、先に言ったように、世の中には数え切れないほどゾンビを取り扱った作品が存在し、さらにその作品ごとにゾンビの設定や解釈、要するに「何で死体が動き出すのか」の理由は微妙に異なります。が、大雑把に分類すると以下の2種類に分類することができます。

 

(1)超自然的ゾンビ・・・呪術、魔法等

(2)科学的ゾンビ・・・改造、遺伝子操作等

 

近年までのゾンビはほとんど前者でした。元祖であるブードゥー教ゾンビ、先に述べた『Night of The Living Dead』は両方とも前者と言えます。まだ科学が発展途上であった時代では、こういったオカルト的な力の方がリアリティのある恐怖だったのかもしれません。ともかく60~80年代まで、「吸血鬼の魔力」「呪いの呪文」「ゾンビパウダー」等の様々な設定でゾンビ映画が製作され、ゾンビブームを支えました。

一方、後者をモチーフにした作品も存在はしましたが、数は大変少なく、またあったとしてもフランケンシュタインのような、ゾンビというより怪物のようなものがほとんどでした。

 

2:食事中のゾンビ

 

『ゲームとゾンビ』

さて、ここでやっとx68らしくPCゲーム業界でのゾンビの話に移りましょう。

PCゲームにおいても古くからゾンビは、「ウィザードリィ」「魔界村」など様々なゲームで登場しました。が、その扱いは「登場する目立たないザコ敵」がほとんどでした。、ほとんど誰の記憶にも残ってないのが現状です。まぁドラゴンやゴーレムが暴れまわるゲームの中では、ゾンビなどザコ扱いでしかないので記憶に無くても無理もありません。「ゾンビゲー」と呼べるようなゾンビ単体で取り上げられるゲームは「スイートホーム」など一部のマイナーな作品のみであり、ゾンビは長年、細々と扱われてきたのです。(その中で、DQシリーズの「くさったしたい」の存在感は特筆すべきものがあります)

 

 

『第二のエポックメーカー』

さて、そんな虐げられてきたゾンビに革命を起こすゲームが登場しました。それが1996年に発売された『バイオハザード(以下バイハ)』です。これは本当に革命的なゲームであり、これを抜きに以降のゾンビ業界を語ることはできません。

3Dのゾンビのノロノロと不気味な動き、どこに潜んでいるのか分からない恐怖、洋館に一人というシチュエーションとこれでもかといわんばかりの恐怖要素。今見れば粗いポリゴンも、余計に気味悪さを引き出しています。

この作品の独特の雰囲気とシステム、操作感は、以降に発売される「サイレントヒル」「SIREN」「零」等の様々なホラーゲームの原型になりました。が、このゲームには後の世に重大な影響を与えたもう一つの要因があります。

すなわち「ウイルスによりゾンビが感染、拡大する」という設定です。

文字通りバイオハザードであるこの設定は、科学が発達した時代だからこそ、我々にリアリティのある恐怖を与えました。さらに、今までのゾンビは、元々は人間だとはいえ、墓場から蘇った見ず知らずの他人であり、完全に「化け物」としてみることが出来ました。ですが、バイハでは「ゾンビはさっきまで生きていた仲間」「自身もいつ感染するかわからない」「死ねば自分もゾンビになる」という生々しい恐怖が襲ってきます。

これが、今まで少数派であった「科学的ゾンビ」に革命をもたらし、ゾンビ映画にも科学的ゾンビが爆発的に増え、今では数は完全に逆転しまいました。科学が発展した現代では、こちらのゾンビの方がリアリティのある恐怖なのです。

 

3:遊ぶゾンビ(キャッチボール編)

 

『恐怖対象から破壊対象』

さて、ホラーゲームとして地位を確立したバイハですが、フラフラしたゾンビを見てプレイ中の誰もが一度はこう思ったことでしょう。

このゾンビ、ぶん殴れないのか?

これこそが昨今のゾンビゲーの主流、「ゾンビぶっ殺しゲー」の根本思想です。

昔からゾンビ映画の登場人物達は、大抵ゾンビから逃げまどってばかりでした。たまに反撃はするけれど、基本的に逃げて逃げて逃げまくります。「もう少し反撃しろよお前ら!!」と観客が思ってもどうすることもできません。映画とは受け身なものですから。ゲームならそれができます。自分が殴りたいと思えばゾンビを殴ることができるのです。

また、製作者側としてもゾンビを登場させるメリットはあります。今の時代、人間を殴ったり吹っ飛ばしたりするゲームを作ると色々な団体から攻撃される可能性があるのですが、ゾンビだったら大丈夫。なにしろ元々死んでますからね。車で轢いてもゾンビだからOK。ランチャーで粉々にしてもゾンビだからOK。どっちにせよ過激なことは変わらないのですが、大事なのは設定なのです。

こうして、ゾンビは恐怖の対象ではなく、破壊衝動の捌け口となり、私の大好きな「ゾンビゲーム」というジャンルが確立され、「ザ・ハウスオブ・ザ・デッドシリーズ」「ゾンビリベンジ」「ゾンビ救急車」等の名作が誕生したのでした。

 

4:死んだように寝るゾンビ

 

『今後のゾンビゲー』

昨今までのゾンビゲームには、どうしてもゾンビ映画を越えられない壁がありました。「ゾンビの数」です。

ゾンビ映画では、何人ものエキストラ、もしくはCGを使ってスクリーンを埋め尽くすほどのゾンビを映すことができます。しかし、ゲームではマシンの性能上、そこに限界がありました。

そこに登場したのが「デッドライジング」です。Xbox360の性能を生かし、一度にワラワラと数え切れないほどのゾンビを出すことが可能に。ゾンビゲームの集大成といえる作品,機会があればぜひプレイしてみたいものです。

 

 

という訳で、皆さんもゾンビに興味が出ましたら、是非ゾンビゲームを遊んでみてください。あ、でもゾンビゲーってグロテスク表現ばっかなので、苦手な方はその辺注意してくださいね。