Shall we Worms?

M2M kinoko

“A donkey, a donkey, my kingdom for a donkey.”

―Winners

1. Introduction

Wormsというシリーズをご存じだろうか.これはイギリスのTeam17が開発している,ミミズ(Worm)どもがBazookaやGrenadeでDestroyしあうCoolでNiceなゲームである.しかし真に遺憾ながら我が国ではあまり市民権を得られていないようなので,ここで少し紹介させていただきたいと思うのである.

2. What's the Worms

2.1. Genre

このシリーズは最も有名なArtillery Gameの一つである.Artillery GameとはStrategy Gameの一種で,Artilleryの名の通り,山なりの弾道を描く砲台を操作してうまく敵に弾を当てるというものである.多くは奥行きのない2Dマップで風の影響を受けたり,地形が砲撃で削られたりする.詳細は英語版のWikipedia[1]に譲るとして,歴史的には1980年代初頭にBASICなどを用いて作られたものが嚆矢とされている.日本ではマイコンBASICマガジンに掲載されたりしていた砦の攻防などが有名だろう.近年は韓国のポトリスが注目されたがいつの間にか消えたようだ.まあ良くあること.

2.2. Series and the History[2]

そのような歴史の中で,Wormsシリーズが世に出たのは1995年である.調べていて驚いたのだが,もっと古いものだと思っていた.95年でこの程度のグラフィックセンスか…すごく,ジョンブルです….この第一作はSFCやGB,PSなんかにも移植されたので,目にしたことのある人もいるかもしれない.

Wormsシリーズは基本的にこの第一作と同じく,ミミズどもが高さのある2Dマップで這ったり跳ねたりするものとなっている.行動はターンベースであり,チームの中で操作キャラはローテーションしていく.ステージの下部は海となっており,キャラはここに落ちると問答無用でリタイアである.キャラのHPが100位であるのに対し,一般的な武器によるダメージは直撃でも50程度である.したがって武器で頑張って削るよりも,水にたたき落とす方が効率的である.そして最後まで生き残ったキャラのいるチームが勝者となり,チームやキャラに対し賞が贈られる.この賞の文句がなかなか面白く,例えば回復アイテムを大量に取るとThe Florence Nightingale Awardが贈られる.

Wormsシリーズが受けたのはキャラが(欧米的な意味で)かわいらしいミミズである点や,複数キャラによるチーム戦であること,また従来砲台であったのが移動可能となったことも大きいと思う.それまでのゲームもTankという表記から移動できた可能性は高いが,ジャンプという動作があったかは不明である.とにもかくにもエポックメイキングなゲームであったことは間違いない.

初代Wormsはその後何作かマイナーチェンジ版のようなものが作られた後,1997年にWorms2が発売された.ここからを第二世代と呼ぶ.グラフィックは現在につながるかわいらしいものに刷新され,インタフェースもまたここで確立されたようだ.正直,2はやったことないから知らん.そして99年にWorms Armageddonが出た.私がWormsに触れたのはここからである.当時初めて買ってもらったPCに体験版が付いてきたのだった.余談だがPopulusシリーズもまた,このときが出会いであった.この第二世代は01年に出たWorms World Partyまで続いた.これも一応やったことはあるが,Armageddonとの違いはわからなかったしよく覚えていない.

その後のWormsシリーズは新しい方向性を模索し始め,個人的には迷走したように思う.03年から数年,3D化の波が押し寄せた.やったことがないので評価のしようはないが,スクリーンショットを見る限りプレイは大変そうである.機会があればやってみたいが….さて,実はこうした3D化の前からいろいろやっていたようで,99年から04年にかけてピンボール,パズルボブルっぽいもの,さらにはゴルフゲーム化までしたようである.さすがに手を出そうとは思わない.

そんなこんなの後,Wormsシリーズは2Dに帰ってきた.06年にPSPとDSで発売されたWorms: Open Warfare(OW1)からのシリーズを第三世代と呼ぶ.グラフィックもゲームシステムも特には変化がないようである.その後07年にXBOX360でWormsが,PSPとDSでWorms: Open Warfare 2(OW2)が,08年にWiiでWorms: A Space Oddityが出た.本稿ではこのうちWorms: Open Warfare 2を紹介したいと思う.

How to Get

さてそんなWormsシリーズであるが,基本的には海外のソフトなので日本では手に入りにくい.初代は国内でもPSで発売されたようなので,ひょっとすると中古で見つけることができるかもしれない.また,Armageddonもメーカ製PC向けに体験版が配布されたということは,国内販売されていた可能性があり,これもまた中古で見つけることができるかもしれない.今のPCで動くかはわからないが.

これらに比してまだ手に入りやすいと考えられるのが近年出た海外版のコンシューマソフトである.海外版の輸入サイトやショップも増えてきたので希望はある.私も今夏とあるサイトでPSP版OW2を購入した.残念なことにそのWebショップでは,私が購入したと同時に品切れになってしまったのでご紹介することはできなかったが.

ただしこうした海外版の購入に際しては,リージョンコントロールに注意する必要がある.XBOX360版は北米版,Wii版は北米,欧州,豪州版として発売されているため,ご当地の本体でなければならない.まあWiiは一部リージョンフリー化できるとかなんとかげふんげふん.

そうしたわけでいま最も手に入りやすいと考えられるのが,前に売り切れたとか書いておいて何だがOW2である.PSPやDSは基本的にリージョンフリーなようなので比較的安心である.PSPおよびDSではOW1もあるが,より古いのでより入手は困難であろう.実際,いくつかのサイトを見て回った限りでは皆無であった.

3. Worms: Open Warfare 2

3.1. Overview

そんなこんなでOW2のご紹介である.基本的には今まで触れてきたWormsシリーズのPSPおよびDS版であり,特に目新しい点はない.詳細は公式サイト[3]にて熟知すべし.PSP版とDS版の違いは,操作方式とおまけ要素であるようだ.PSP版はそれまでのコンシューマ版やPC版と同様の操作方法であるが,DS版ではタッチペンを使えることがアドバンテージである.しかし,このゲームにおいてはなるべく画面が広い方が良いので,そうした意味で私はPSP版を選択した.おまけ要素は,PSP版がキャラの帽子を選べること,DS版がいくつかのミニゲームを遊べることらしい.どちらも本質的に無価値である.

本作では過去作品がそうであったように,一台でのマルチプレイが可能である.また複数台でのマルチプレイも可能であり,PSP版ではアドホックとインフラストラクチャモードが,DS版ではワイヤレスとWi-Fiネットワーク通信が可能なようである.

このシリーズでは武器が最も重要な要素である.本作での新規武器は設置型自立砲台であるSentry Gunと向かってきた弾をそらす効果のあるElectro Magnetおよび死者を復活させるLightning Strikeであるが,いずれも正直地味である.むしろ敵に使われていらいらすることが多い.その他の武器はシリーズの伝統的なものばかりで,良くも悪くも安定している.

最も特徴的なのはConcrete Donkeyである.これはすべてを押しつぶすロバの像が降って来るというものであり,使用後にはキャラ幅の7倍くらいでステージ下部の海まで達する縦穴が残るのみである.当然,風を読んで弾を当てるというArtillery Gameの情緒のかけらもない武器であるから,俺つえー以外での使用,特に友人とのプレイ時には注意が必要である.

基本的な武器としてはBazooka,その上位としてのHoming MissileやGrenade,その上位としてのCluster BombやHoly Hand Grenadeなどがある.その他にはUziやShotgun,Mineといった常識的なものから,Banana Bomb,Sheep,Baffalo Of Liesといったふざけたものもある.そして決まってふざけたものの方が強力である.

もちろん,このような攻撃的なもののほかにも穴を掘ったり足場を作ったりするものがあるので,うまく使えば快適な引きこもりライフを送ることができるだろう.いやな場所からはJet PackやTeleportで逃げ出してもよい.

その他の要素としては,チームエディット機能がある.キャラの名前や見た目(肌の色や帽子など),チームの旗や言語を選ぶことができる.キャラは行動するたびに何か一言漏らすが,それが様々な国の言葉になるのである.もちろん,同じ英語でもいくらか種類がある.それだけかと思われるだろうが,結構空耳が楽しいのである.「冷静なファッション!」とか.実際何と言っているのかは知らない.

3.2. What's Wrong

OW2はWormsシリーズ未体験の方には大いにお勧めできる作品であるが,過去にWormsシリーズ,特に第二世代のものをプレイしたことのある者にとってはやや残念なところもある.少し愚痴を聞いて欲しい.

まずは炎についてである.Armageddonでは火炎放射器やナパーム爆撃といった武器があり,またステージ各所におかれたドラム缶が爆発した際にも炎が発生した.これは風の影響を受けるダメージ判定要素が一定時間ステージにとどまるというもので,地形のくぼみに炎を広げ,そこに敵を突き落として大ダメージを与えるという素敵なプレイを可能としていた.しかし,OW2ではそうした武器は削除され,またドラム缶もただ爆発して地形に丸い穴をあけるだけの存在になってしまった.

次にいくつかの武器の削除である.ArmageddonではOld WomanやMad Cow,MiniGunといったものがあった.統廃合はわかるのだが,本作はいかんせん過去作品に比して武器の種類が少ない.特にネタ武器が.イギリスの会社である以上,Mad Cowは欲しかったところである.

またチーム編成の自由度低下もある.これまたArmageddonでは全チームで16キャラという制限はあるものの1チームは最大8キャラまで使用することができたが,これが最大4キャラ固定となった.1チームでと2チームでとはまた違うものであるから,ここはもう少し柔軟性が欲しかったところである.またチームの旗を付属のエディタで描く事ができるが,デフォルトに戻すことができないので場合によってはみすぼらしいことになる.色も16色で画像ファイルを読ませることもできないので素人には残念な感じである.私は某生徒会のマークにしようとして挫折中である.

そして,CPUのオツムの問題である.AIの強さを変えられるゲームのご多分にもれず,頭は悪いがえげつないのである.Dynamiteで自爆したり海に向かってI can flyしたりするくせに,ステージの端から端まで正確にBazookaをヒットさせてくる.地形での跳ね返りも利用して時間を調整し,Grenadeをさりげなく足もとで爆発させてくるなどである.狙いが正確なのは歓迎だが,せめて自分がダメージを極力受けないようなプログラミングはできなかったのだろうか.行動決定は基本的に可能な行動を網羅してシミュレーションし,敵に与えるダメージを評価関数としているようなので,そこに自分が受けるダメージをマイナスの評価として組み込むくらいなら簡単だと思うのである.これはWormsシリーズの,そして世の中のゲーム全般に言えることだが.

また,これもシリーズ全体に言えることだが,砲爆撃で地形が削られるとわずかな面積だが地形が宙に浮いた状態で残ることがある.地形に重力が働かないのは良いのだが,数ピクセル程度の地形に移動が阻害されたり弾が誤爆したりすることが多発する.実際にはプレイヤーがないものと思い込んでいるだけなのだが,背景に近い色だとまず気付かないのでフラストレーションがたまるのである.これも地形が削られる処理の中で境界から地形のつながりを探索し,一定のピクセル以下の領域であればそこをただの空間にする,といったことで対応できるのではないだろうか.もし今後Wormsのようなゲームを作りたいと思われたなら,こういった点にも考慮していただけるとプレイヤーは幸せになれるのではないかと思う.

4. TO MAKE THE END OF ARTICLE

以上,本稿ではWormsシリーズをご紹介した.なかなか手に入りづらいものではあるが,是非とも触れてみていただきたいものである.なお,画像も貼らずに紹介とな?と思われた方には是非ググっていただきたい.思うつぼである.いや,当然めんどかっただけである.

さて,自転車の原稿でも似たことを述べたが,私がこうして会誌に寄稿するのも今年が最後である.振り返れば恥ずかしくなるようなことばかりだったが,それなりに楽しい日々であった.先日調べ物をしていたら,検索で過去の自分の原稿が引っ掛かり何とも言えない気分になった.ひょっとするとあの記事がもとで関数電卓に興味を持った人もいたのかもしれない.本稿でWormsに興味を持つ人もいるかもしれない.何らかの形で自分が誰かに影響を及ぼすというのはどこか遺伝子を残すようで厳粛な気分になる.これを読む貴方には,何か伝わっただろうか.…この記事もまた後年再見したとき恥ずかしくなるのだろう.晃さんになじられたい.

References

  1. Wikipedia,Artillery_game
  2. Wikipedia,Worms_(series)
  3. Worms: Open Warfare 2 official cite

Have Wormy Days!