序
気付けば、天に空は無く、ただ雷鳴とどろく暗雲があるのみだった。 見渡せば、幼少から暮らしたこの故郷も、昨日までと違い静けさに包まれていた。 そして今、旅立つ少年を見送る村人たちにも、不安の色が立ち込めている。 だが、彼の眼差しに曇りはない。 自分を見守ってくれた人々に笑みを返し、少年は剣を取った。 その重みにたじろぎつつも、剣を鞘に収め、彼方にそびえる山々に思いを馳せるのだった。 そして、立つのだ。志を貫くために。 そして、行くのだ。世界の真実を見極めるために。 心に持つは正義か夢か、託された使命を忘れはしない。 どこまで行けるかは分からない。だが、死の運命さえ立ち向かえるだろう。 古びたマントをなびかせながら、戦士は一歩を踏み出した――。 ・ ・ ・ |